筆者は違法ダウンロードと浅からぬ因縁がある。2007年、委員として参加していた文化庁の著作権分科会私的録音録画小委員会で、音楽・映画業界から提案されたのがダウンロード違法化の端緒だったのだ。対象を音楽と映像に絞り、刑罰をつけない「限定的な海賊版対策」だとして、強引に違法化を決めた。

「将来的に刑罰がつく可能性は高く、業界の要望でテキストや写真など音楽・映像以外の著作物にも対象が及ぶことは疑いがない。そうなればインターネット全般に大きな混乱を招く」

 筆者はこう主張し最後まで反対した。だが18人の委員のうち私以外の17人が賛成に回り、押し切られてしまった。そして10年1月、音楽・映像に限定した刑罰のないダウンロード違法化が施行された。

 その後、大物タレントを動員した音楽業界の働きかけもあって、議員立法で違法ダウンロードの刑罰化が強引に決められた。「刑罰をつけない」という限定は、わずか2年で反故(ほご)にされた。そして今、「音楽と映像に絞る」という限定までも、反故にされようとしている。法律というのは一度“穴”を開けてしまえば、このように為政者の都合の良い方向に、どんどん拡大されていくのだ。

週刊朝日  2019年3月1日号

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