入れ歯洗浄剤を入れた水に入れ歯を浸しておくと、時間の経過とともに、レジンの穴に入り込んでいる汚れが洗浄、殺菌されていきます(なお、入れ歯を熱湯で煮沸する人もいるといいますが、それはNGです。高温によって変形する危険もありますし、劣化するとさらに細菌が繁殖しやすくなります)。

■入れ歯洗浄剤は毎日使用を推奨

 有名な入れ歯洗浄剤のメーカーが行った実験では、においの原因菌除去率は入れ歯をつけて5分間で99.9%という結果でした。そして、以前は週に1回程度の使用がすすめられていましたが、今はメーカーも歯科医師も「毎日の使用」を推奨しています。

 背景には、入れ歯を使っている方の年齢が高くなってきたことがあります。高齢になると歯ブラシでのケアがおっくうになります。歯ブラシを使いたくても手が動かしにくくなってうまくいかなくなったり、要介護の方では家族にやってもらっているケースもあるでしょう。

 さらに入れ歯についた汚れや細菌は口臭だけでなく、むし歯や歯周病、そして高齢者の死亡の原因となる誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の引き金になります。こうした観点から、手軽でかつ、洗浄効果の高い入れ歯洗浄剤のこまめな使用が推奨されているのです。

 実際、歯ブラシでていねいに磨くのは大変ですが、入れ歯洗浄剤でのケアは楽ちん。費用も安いので(100錠で800円くらい)、うまく取り入れていただけるといいと思います。清潔な入れ歯を口に入れるのは気持ちがいいものですよ。

 なお、入れ歯に長期間にわたって蓄積したたばこのヤニ、茶シブなどは専用のブラシや入れ歯洗浄剤ではなかなか落ちにくいもの。歯石も同様です。このような場合は無理に取ろうとすると入れ歯が破損することがあるので、歯科医院でやってもらいましょう。

 入れ歯は作って終わり、ではありません。合わない場合の調整や残っている歯のむし歯、歯周病予防のために、定期的な検診をする必要があります(これが快適に使うためのコツでもあります)。検診の際には入れ歯の汚れ具合もチェックしてもらえるので、においの心配があれば遠慮なく相談するといいでしょう。

◯若林健史(わかばやし・けんじ)歯科医師。若林歯科医院院長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演

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