■口の中の細菌を減らすことが誤嚥性肺炎の予防に

 鶴見大学歯学部歯周病学講座の五味一博歯科医師の研究によれば、これら洗口剤のプラーク抑制効果、歯肉炎の抑制効果が確認されています。

 実は洗口剤は若い方だけでなく、高齢者にもおすすめできます。口の中の細菌を唾液と一緒に、誤嚥(ごえん)してしまうことにより発症する誤嚥性肺炎は高齢者の死亡原因の一つとして注目されています。高齢になると十分な歯みがきができなくなってくるので、簡単に使える洗口剤で口の中の細菌を減らすことが誤嚥性肺炎の予防につながります。

 歯科医師の間では、このような理由から、今後さらに洗口剤のニーズが高まってくることが予想されています。

 ただし、洗口剤に頼りすぎてはいけません。前出の五味歯科医師の研究によれば洗口剤の効果は最も高かったグルコン酸クロルヘキシジン(0.1~0.2%)で21.6~61%(プラーク抑制率)、18.2~39%(歯肉炎抑制率)という結果でした。

 また、歯周病の原因となるプラークには、歯ぐきの外に付着しているもの(歯肉縁上プラーク)と、歯周ポケットの中に付着しているもの(歯肉縁下プラーク)の2種類がありますが、洗口剤の効果が認められているのは歯ぐきの外に付着しているプラークに対してです。このことをふまえ、上手に使いましょう。

 具体的な使い方ですが、歯みがきとデンタルフロスに加え、洗口剤をプラスする、という位置づけがよいと思います。

 そして、忘れてはいけないのが歯科医院での定期的なメインテナンス。歯ぐきの内側のプラークはセルフケアだけでは取り除けないからです。

 なお、洗口剤の選び方ですがみなさんがドラッグストアで購入できるものは、医療用と違い、薬剤の濃度が低いので、成分による作用の違いはほとんどないと考えていいでしょう。ボトルタイプやスプレータイプなど形状の違い、香りや味の違いなどにより、さまざまな商品がありますので、好みのタイプを選ぶといいでしょう。

◯若林健史(わかばやし・けんじ)歯科医師。若林歯科医院院長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演

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