奥田:向こうに電話して、3回に分けて払ったのかな。それからもお金がらみで本当にいろいろなことがあり、ずいぶん年月かかって、全部の借金がなくなったのが去年です。今、ようやく借金ゼロ。(肩を上下に動かしながら)すごく軽いの(笑)。

林:ほぉー! よく和津さんや桃子さんが「うちはすごく貧乏だった」って書いてるから、こんなスターさんのうちがそんなはずないだろうと思ってたけど、本当だったんですね。

奥田:酒のツケとかいろいろなことがありながら、そのあと2000年から映画監督になったもんだからね。映画作りって、すごくお金がかかるじゃない。

林:でも、桃子さんもサクラちゃんも、お父さんをすごく尊敬してますよね。お酒飲んだり、いろんなところを見てるわけでしょう。それでもこれだけの尊敬と愛情を持たれているお父さんって、ちょっといないかも。

奥田:二人とも僕のいいところだけを見て、悪いところは全部ゴミ箱に捨ててたんでしょうね。いつだったか、サクラが「きのう飲んじゃった。お父さんの気持ちが少しわかった」って言うわけ。「役者って、吐き出した分、『よし飲もう』って飲んじゃうじゃない。その『飲もう』の意味がわかった。なくなった分、何かを吸収しないといけないんだ」って。

林:おー、深い言葉ですね。

奥田:「だからお父さんの気持ちはわかった。でも、私はお父さんみたいにはならない」みたいなことを言われたときに、「ああ、わかってくれてありがとう」と思った。

林:なるほど。

奥田:役者は監督にほとんど食べ尽くされるんですよ。作品を撮り終えたら、役者は骨と筋とわずかな血しか残らない。だからいろんなことをして元に戻さなきゃいけない。そういう作業が必要なことがわかったんだなと思った。サクラは、俺より優秀な作業で歯止めが利く方法を覚えたんだよ。

林:桃子さんも、私にお父さんのことを話すとき、「父が」とは言わないで、尊敬する先輩としてという口調で「奥田さんが」って言うから、いい親子だなと思いました。お母さんも、お父さんの悪口を言わなかったんだと思う、きっと。

奥田:いっさい言わなかったみたい。子どもたちに「もう11時なのに、パパ、今日も遅いわねえ。何してるんだろうね。たまには一緒におねんねしたいよね」ってグチる母親、世の中にいっぱいいるらしいんだよ。和津さんは、それがないからね。家に帰らない日があったにしても(笑)。

(構成/本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2019年2月15日号より抜粋

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