『リヴィング・ウイズ・ジャズ』ダン・モーガンスターン著:シェルダン・マイヤー編
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●批評家モーガンスターンと本書の魅力

『リヴィング・ウイズ・ジャズ』は、20世紀を代表する著名なジャズ評論家ダン・モーガンスターンの数々の寄稿を初めて一巻にまとめた待望の書物である。

 モーガンスターンの集大成となる本書は、ライナーノーツやレヴューからアーティストの人物評や広範な分析にいたるまで多岐にわたるが、終始一貫して造詣が深く見識が高い度量の大きなジャズ評論の第一人者ならではの独自の観点で捉えている。

 ダン・モーガンスターンは、熟達した評論家であり、同時に熱烈なジャズ・ファンでもある。したがって、その並外れた経験と類いまれな情熱は、全編を通して異彩を放つ。

 また彼は、優れた洞察力によって幅広くジャズを評する。きわめて因習的な演奏から、きわめて難解な演奏まで、実にさまざまな作品の音楽性や芸術性を理解し、さらには現代文化におけるジャズの役割をも分析する。

 モーガンスターンは、ルイ・アームストロング、デューク・エリントン、ディジー・ガレスピー、オーネット・コールマン、エラ・フィッツジェラルドをはじめとする多くのジャズ・アーティストを高く評価した。そして彼の評価が、彼らの音楽に対するリスナーのアプローチあるいは認識を変えることになった。

 本書『リヴィング・ウイズ・ジャズ』は、著者ダン・モーガンスターンの秀逸な文章力、深い理解度や大きな影響力ゆえに、必要不可欠なジャズ批評の手本であり、新しいリスナーやファンにとって必読の書である。

●書評

「ダン・モーガンスターンのようにジャズと深く関わる人生を送ってきた人物はまずいない。そして、この本のように刊行を待ちわびたジャズ書もない。もっとも造詣が深いジャズ史家の、またもっとも説得力のあるこの評論家の影響は計り知れない。ジャズ通、シェルダン・マイヤーの編集も見事な不朽の評論集だ」
ゲイリー・ギディンス:『ウェザー・バード:ジャズ・アンド・アーツ・クリティシズム1900-2003』著者

「ジャズの歴史録と演奏評の最高傑作だ」
アルバート・マレー:『ストンピング・ザ・ブルース』著者

「モーガンスターンには、ほとんどのジャズ・ライターと一線を画する特色がある。つまりそれは、音楽を作る人間への思いやりだ。彼は常に、ミュージシャンを尊重し理解を示してきた。この本は、ひとつの芸術表現形式に対する鋭敏な愛の証しであり、著者の人としての器の大きさの証しでもある」
スタンリー・クロウチ:『ジ・アーティフィシャル・ホワイト・マン』著者

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