「あ、こまどり姉妹!!」
にぎやかな東京・浅草六区の繁華街でも、双子姉妹デュオ・こまどり姉妹の2人の姿は、小柄でありながらひときわ目立つ。観光客は振り返り、おそらく2人の芸歴を知らないであろう外国人も思わずスマホで撮影する。
地元の人たちにとっては顔なじみで、「こんにちは!」「元気?」と、お互いあいさつしながら歩いていく。
「健康のために、毎日のようにこのあたりを歩いているんです。雨の日は、つくばエクスプレスの地下道を歩くこともありますね」
と、姉の並木栄子さん。
栄子さんと妹の葉子さんは現在80歳。今年はデビュー60周年。同期にあたる歌手は、ザ・ビーナッツ、水原弘、坂本九らそうそうたる面々が並ぶ。いずれも故人だ。
「『なんでそんなに若いの?』ってよく聞かれるんですが、やっぱりステージに出て人に見られるわけですからね。きれいなイメージで見てもらいたいというのが、ずっとあるんです。あの2人、変わったわねって言われないように、いつも姿勢をよくして着物やきれいなお洋服を着て。適度な緊張感をもって、自分たちのやるべきことをやってるだけなんですよ」(葉子)
栄子さんも日々努力していることを認める。
「同じ世代の方々を見ると、時の流れに流されてそのまま年齢を重ねたような姿形になってきますからね。背中を曲げたほうが自然で楽でしょうし」
レコードデビューの前から、三味線を抱えて少女流しとして浅草の街で歌っていた。美空ひばりに憧れて1959年に歌手デビュー。“演歌版ザ・ピーナッツ”というキャッチフレーズで親しまれ、「ソーラン渡り鳥」「浅草姉妹」などヒット曲にも恵まれた。
一方で、時には先輩からいじめられたこともあったという。
「何言われたって私たちは泣かなかったの。ステージで勝負するんだっていう根性がつきました」(栄子)
「お父さんに言われました。『いじめられるということは、それだけお前たちに力があるからなんだ』と。むしろ可愛がられたらおしまい、いじめられてこそ本物なんだと、はげまされました」(葉子)