作家の室井佑月氏はフランスの反政府運動を見て、「このままじゃいけない」と危機感を抱く。
* * *
燃料税を引き上げることにした政府に対し、反政府運動がフランス全土に広がっていった。
燃料増税は見送ることになったものの、デモは拡大していった。マクロン政権が一部の富裕層ばかりを優遇し、その他大勢の労働者や低所得者に冷たいからだ。
このままではまずい、とさすがにマクロン大統領も感じたのか。12月10日、国民に向けて演説をした。そして、こういった。
「国民の怒りは正当だ」と。
そして、最低賃金引き上げや、月額2千ユーロ(約26万円)未満の年金生活者への減税などを約束した。
演説の中でマクロンが否定したのは、デモの中の暴力だけであった。
つまり、不満を叩き付けた国民に、マクロン大統領は完全に負けを認めた。
フランスで膨らんでいった国民の不満は、じつは世界の多くの国民も感じていることではないのか?
力ある者が富を独占するのは当たり前で、そうしなければ世界の競争には勝てない。貧しい者はそのおこぼれを待つように、という考え方がおかしいのだ。
この世の富める者は、際限なくどこまでも貪欲で、世界と競争するためという言葉を建前にし、多くの者を犠牲にしてきた。いずれみんなが良くなるといっているが、そんなときはこないし、多くの者は使い捨てにされるだけ。
この国でもまったくおなじことが起きている。
あたしは先々週、野党議員が団結して辞表を提出するところまでやらなきゃ、もうダメなんじゃないかという話を書いた。そこまでやったらメディアジャックできるし、多くの国民もついていくだろうと。
ハロウィーンの渋谷での暴動が、ワイドショーを独占した。防犯カメラから、暴動に参加した者が特定され、逮捕者が出たからだ。
この国の進んだ技術を見せつけることは、未来に起きるかもしれないテロの抑止力になる、そう解説されていたが、ほんとだろうか?