![春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。JFN系FM全国ネット「サンデーフリッカーズ」毎週日曜朝6時~生放送。メインパーソナリティーで出演中です](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/d/b/412mw/img_db09602351764bf80391b3bc1db3e1d829323.jpg)
![イラスト/もりいくすお](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/c/2/620mw/img_c2c4bb50da0292226dcf119b9b73a72a63663.jpg)
落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「名作」。
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ここんところ、「『名作』を書きたい!」という力みがまるでないです。コラムに『名作』という表現が合ってるかわかりませんけども。「力み」というか、「色気」「やまっ気」と言ってもいいかもしれない。
だってもう自分が先週書いた内容すらも覚えてないですもん。連載200回を過ぎたころから、「あれ? 前にも同じコト書いたかも?」……なんてのがたびたびです。でも、「まぁいいか……読んでない人もいるだろうし……」と。早い話、肩の力が抜けてきたのです。よく言えば。
ところで『名作』と『傑作』って違うもの? どっちも「優れた作品」なのはわかるけど、どこが違うのか? 『名作落語』とは言うけど『傑作落語』とはあまり言わないなぁ。
『名』のほうが、一般的認知度が高い作品か。わかりやすく言うと、三遊亭圓朝・作『芝浜』は『名作』。林家きく麿・作『パンチラ倶楽部』は『傑作』。余計わかりにくいかな? 『傑作』は、それを推す評者の主観が濃いですかね。まぁとにかく、きく麿兄さんは天才です。ちなみに顔は安美錦に似てますよ。
横浜にぎわい座という寄席では、毎月『名作落語の夕べ』というタイトルの落語会が開かれています。私が前座のころは司会者の玉置宏さんがにぎわい座の館長でした。
『名作落語』というからには厳選された落語が演じられるイメージですが、そんなこともなく……古典落語なら何でもかかってるかんじです。もっとも古今の噺家が口伝で残してきた古典落語は、今残っている時点ですでに『名作』なんだね。
『名作落語の夕べ』の私的見所は、玉置さんがその日演じられる予定の『名作落語』を解説するオープニングトーク。落語大好き玉置さんは、舞台袖にいる時から超ゴキゲンです。私たち前座にも積極的にバンバン話しかけてきます。