文部科学省で事務次官を務めた前川喜平氏が、読者からの質問に答える連載「“針路”相談室」。今回は、文科省の不祥事について疑問を感じた男性からの相談です。
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Q:文部科学省では7月以降、局長級幹部2人が収賄の疑いで起訴されました。事務次官も不適切な接待を受けていたとして引責辞任しました。次官の引責辞任は、前川さんを含め、2代続けて。文科省は他の省庁と比べて腐敗しているのでしょうか。(東京都・50歳・男性・会社員)
A:僕はモラルの低下が文科省だけの問題だとは思いません。これは実は省庁を超えた問題で、「鯛は頭から腐る」と言われるように、根本的な原因は行政を私物化する今の安倍一強政治にあると思うからです。
公務員は「全体の奉仕者」でなくてはならない。それが安倍政権の官邸主導人事によって、官僚は官邸の顔色をうかがって物事を進める「一部の奉仕者」になってしまっている。根源は、そこにあると思うのです。
僕は役所による違法な天下りあっせんの責任を取って辞任しました。退職公務員の再就職自体が違法なのではなくて、現職の公務員があっせんしたことが法に触れたのです。
「天下り」と言われる公務員の再就職のどこが問題かというと、見返りとしてポストをもらうために役所が特定の業者に甘くなったり、天下った人が自分が元いた職場に影響力を行使して行政を歪めたりすることが問題なのです。
僕は文科省の事務次官のとき、加計学園の獣医学部新設を急ぐよう、文科省OBの先輩から働きかけを受けたことがありました。そのとき、その先輩は内閣官房参与という政府のポストにいながら加計学園の理事にもなっていました。これは明らかに行政を歪めようとする行為でした。だから僕は「こういうことがあった」と国民に知らせた。でも、この先輩の加計学園への天下りは法規制の対象外でした。彼は全く適法に天下りしていたのです。つまり、現在の天下り規制は、本当の意味での弊害を取り除くためには不十分なのです。