何もしなければ、プラスもマイナスもすべて引き継ぐ「単純承認」となってしまう。3カ月たってから隠れていた多額の借金がわかり、亡くなった人の代わりに返済を求められるケースも考えられる。その場合、相続人が借金を把握できなかった正当な理由などがあれば、3カ月経過後でも相続放棄が認められることもある。

Q:納税額を減らす「生前贈与」の方法は?

A:年間110万円以下を贈与
 相続税に詳しい佐藤和基税理士は、相談を受けたら(1)生前贈与(2)生命保険(3)不動産の活用の三つをすすめるという。

 生前贈与では基本的に、年間の贈与額が相手1人当たり110万円以下なら非課税となる。ただし、亡くなる前3年以内分については、相続税の課税対象になる。納税額を確実に減らすには、早いうちから贈与をスタートしよう。

 相続人ではない孫に直接贈与するのも有効だ。相続人でなければ、亡くなる前3年以内に贈与しても、相続税の課税対象にはならない。体調が悪くなってから複数の孫に110万円ずつ贈与しても間に合う。

 生前贈与はいずれにしても、後から税務署に否認されないよう、贈与の事実を相手に伝え、お金の管理も相手に任せることが重要だ。

 生命保険や損害保険は受け取った保険金のうち、法定相続人1人当たり500万円まで非課税。

「受取人を指定できるため、遺産分割の方法が決まる前に受け取ることができる点もメリットです」(佐藤氏)

 不動産は資産価値が現金より低く評価されることが多く、節税効果がある。

「同じ1億円の評価額でも現金は額面どおり1億円なのに対し、不動産は実際の取引価格に比べ2~3割程度低く評価されます」(同)

 さらに改正で、結婚期間が20年以上の夫婦であれば、自宅を相手に生前贈与すれば遺産分割の対象から外れる。弁護士の小堀球美子氏は狙いをこう説明する。

「高齢化を背景に、残された配偶者を保護する目的があります。財産に占める不動産の割合が大きく、遺産分割のため自宅を手放さなくてはならないケースでは、高齢の妻が住み慣れた家から放り出される恐れがありました」

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