自衛隊が人手不足に陥っている。少子化でただでさえ若い人材を集めにくいのに、民間会社に人材を奪われているのだ。このため防衛省は、自衛官の採用年齢の上限を10月から26歳から32歳にした。引き上げは28年ぶりで人材難の深刻さがわかる。
現場部隊の中核を担う「一般曹候補生」の応募者は、2013年度の3万4534人から17年度は2万9151人に減少。任期付きの「自衛官候補生」も3万3534人から2万7510人に減っている。
陸海空に統合幕僚監部も加えた自衛官の定員は、18年3月末時点で24万7154人。だが、現状の隊員数は22万6789人で充足率は91.8%にとどまる。軍事ジャーナリストの田岡俊次氏はこう語る。
「法令上の定員数とは別に、財政上の理由などで充足率を下げる『予算定員』もあります。募集人員が計画を下回ると翌年の予算が減らされるので、自衛隊は“員数合わせ”に必死になります。いったん除隊して民間会社に就職した人が戻ってくるケースが結構あるようで、採用年齢の引き上げは、そうした人の受け皿にはなっています。しかし、『32歳の2等陸士は夜間行軍などの訓練で真っ先に脱落するのではないか』と案じる声が部隊内から出ています」
また、採用時の身体検査基準で体重制限も緩和する。“ちょいメタボ”でも認められることになったのだ。
自衛官は、階級によっては53歳や54歳で定年になる若年定年制を採用している。防衛省は「自衛隊任務の性格上、組織を常に精強な状態に維持する必要があるため」だとしてきたが、背に腹は代えられない。若年定年制を見直し、延長する方向で検討している。
あの手この手で人材確保に躍起だが、悩ましい問題がある。採用年齢の上限引き上げに加え定年延長も実施すれば、高齢化に拍車をかけるからだ。
「自衛官の階層別の年齢構成」のグラフを、1990年と17年とで見比べると一目瞭然だ。90年は20歳代の若い人が最も多く、グラフは裾広がりの形だった。