とはいえ、あくまでSF映画。現実とは飛躍があるのか。だが、CCWの会合で日本代表団を務める外務省の担当者はこう語る。

「ターミネーターは指示を受けて人間軍のリーダーを殺そうとするわけですが、それ以上の現象が起きるかもしれません。もちろん、ターミネーターのような殺人ロボットが現れる可能性については、科学者の間で見解が分かれています。機械が人間のプログラム以上の動きをするわけがないと主張する人もいます。一方で、AIが人間の能力を超える地点『シンギュラリティー(技術的特異点)』が起きて、プログラムを勝手に書き換えたり上書きしたりしてしまうのではないかという見解もあります。ロボットが予測もしない行動を起こし、人を殺傷するようなことがあると怖い。両方の可能性を検証していく必要があると思います」

 SNSの世界の話だが、AIが人間の予想を超えて“暴走”したケースがある。米マイクロソフト社が開発したAIチャットボットが、ユーザーとの会話を通じて人種差別や性差別的な表現を学習。ジョークを交えながらナチスやヒトラーを礼賛し、ホロコーストはなかったなど不適切な発言を連発して関係者を驚かせた。このチャット・サービスは早々と停止された。

 米ロなどとともにAI先進国のイスラエルでは、今後20~30年間をめどにロボットだけの部隊編成を構想していたが、結局、断念することになった。

「ロボット兵器はAI研究やロボット工学など最先端科学の結集です。過信してしまいがちですが、ロボットが無差別に自軍の兵士を攻撃してくる不安を払拭(ふっしょく)できなかった。やはり、人間の司令官の配下に置くべきだと判断したのです」(軍事ジャーナリスト)

 一方、研究者として日本代表団に加わる拓殖大学国際学部の佐藤丙午教授は、ターミネーター型ロボット兵器の出現を否定する。

「いまの兵器システムからターミネーターに至るまでには、多くの技術的な障壁があります。あまりにも現実離れしていて、恐怖をあおるだけ。議論することは非生産的です。ただ、LAWSに至るまでの間にある『高度に自動化された兵器』というのは存在します。ロシアの銃器メーカー・カラシニコフ社は、小銃を装備した無人のミニ装甲車両のような兵器を開発し、ICBM(大陸間弾道ミサイル)のサイトや軍事施設の護衛のために動き回らせています」

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