そのソフトバンクとトヨタが10月4日、提携を発表。共同出資で新しいモビリティーサービスの会社を設立する。両社の関係が深まれば、「孫氏の米国人脈をトヨタが利用してトランプ氏に近づく展開もありうる」と見る向きもある。
トランプ氏の強硬姿勢は、トヨタの中国ビジネスにも影響し始めている。
北京から南西105キロの位置にある「雄安新区」。総額2兆元が投資されて建設されるスマートシティーで、第2首都的な位置づけとなる。完成は2020年代前半だが、すでに今夏には行政機能の一部がオープンした。無人スーパーなども導入され、都市の形ができ始めている。
雄安新区は中国のAIに関する4大プロジェクトの一つ「アポロ計画」の実験場となるだろう。「アポロ計画」を牽引するのが、インターネット大手の百度(バイドゥ)で、AIを使って世界最先端の自動走行システムを開発するプロジェクトだ。雄安新区では、インフラ側も最先端の技術を導入しており、自家用車はすべて無人運転のクルマになる予定だ。
中国側が特にねらうのがトヨタの技術。5月に来日した中国の李克強首相は、変速機を生産するトヨタ北海道工場を見学し、メモを取りながらトヨタを質問攻めにした。それを契機に、「トヨタにほれ込んだ李首相が盛んに雄安新区への進出を誘っている」(政府筋)という。
9月に経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)や日中経済協会の宗岡正二会長(新日鉄住金会長)ら経済人が訪中した際、トヨタの内山田竹志会長も同行したが、北京での晩餐会を欠席して雄安新区を訪問した。
トヨタの17年の中国での販売台数は前年比6.3%増の129万台。日系トップは日産で12.2%増の152万台、2位がホンダで15.5%増の144万台。中国戦略が日産やホンダより遅れたトヨタにとっても、雄安新区への誘いは渡りに船だ。
しかし、トヨタは中国の誘いにちゅうちょしている模様だ。雄安新区は中国のハイテクを結集させたプロジェクト。加担すれば米国から目をつけられるからだ。