トヨタは、北米で売るハイブリッド車の基幹部品である電池などを日本から輸出してきた。「新しいルールに応じてハイブリッド車の部品の現地生産を検討している」と、小林副社長は説明する。

 さらに問題は、来年1月にも日米間で始まるとみられる「物品貿易協定(TAG)」交渉。米中間選挙で与党共和党が下院で敗北したものの、トランプ大統領は強気の姿勢を崩さない。選挙直後7日の会見で対日貿易交渉に言及し、「日本は貿易で米国を極めて不公平に扱ってきた」と述べた。

 日本から米国への自動車輸出が多いのに、米国からの対日輸出が少ないことを問題視し、今春にはWTO(世界貿易機関)のルールを無視して自動車に25%の追加関税をかけると日本に脅しをかけた。米国案どおりに関税がかかれば、トヨタは1台あたり6千ドルの影響が出る、としている。

 トランプ氏のターゲットはトヨタにあるとみていい。日本企業で純利益額、株式の時価総額がともに1位であるトヨタを、米国市場で稼ぐ「日本代表」とみなしている。大統領就任が決まった直後の17年1月から、トヨタをたたいてきた。

 たとえば、トヨタはメキシコ戦略が遅れて同国での生産台数が日産自動車より少ないのに、「トヨタがメキシコの新工場計画を撤回しなければ、重い輸入税を課す」と述べた。発言を受け、トヨタは首相官邸に助言を求め、17年2月には初の日米首脳会談を控えていた安倍晋三首相と豊田章男社長が急きょ会談した。

「星条旗を象徴する」と言われたGMやフォードといった米国の自動車メーカーを蹴散らしてきたトヨタ。トランプ氏に限らず、これまでも米国政治のターゲットにされてきた。

 1995年の日米自動車摩擦の際、当時の橋本龍太郎通産相とカンターUSTR(米通商代表部)代表の交渉は決裂寸前だった。しかし、トヨタが米国への投資と米国製品の輸入の拡大を柱とする「新国際ビジネスプラン」を発表することで、交渉は決着した。当時の一部報道で「CIA(米中央情報局)は、日米交渉担当のトヨタ役員宅の電話を盗聴していた」と伝えられたほどだ。

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