何しろ、ソロ・デビュー以来、毎年必ず新作アルバム(09年からは数曲入りシングル)を出している。持ち歌は膨大な数だ。さらに、毎年必ず全国ツアーに出て、全国で10万人規模の動員力を維持している。ロック主体の公演を月に10回前後。70歳の男が驚異的なスケジュールをこなし、ステージを走り回っているのだ。08年に東京ドームと京セラドーム大阪で実施した還暦記念公演では6時間かけて80曲を歌い上げた。デビュー50周年となった昨年は、60を超す公演で毎回50曲を歌った。

「これほど仕事をする芸能人はいない。超人的です」

 ジュリーの名曲の数々を手がけた大野さんの弁だ。

 あれは10年2月、NHKのスタジオだった。かつてジュリーのプロデューサーだった故加瀬邦彦さんと雑談した際、こう言われた。

「(素人の)君にはわからないかもしれないけど、プロから見たジュリーのボーカルってすごいんだよ」

 またあれは14年9月、渋谷公会堂での公演だった。客席でたまたま元タイガースの岸部一徳さんと隣り合わせた。ジュリーが「追憶」(74年)を歌い始めると、いつものポーカーフェースだった岸部さんが、目を輝かせて腰を浮かした。

「なつかしいなあ。やっぱ沢田、すごいな。よう、こんだけ声が出るわ」

 往時と比べたら、体形も声質も違う。10年2月のインタビューの一部も紹介しよう。

――還暦を過ぎても全速力で走り回っていますね。

お金を払って見てもらう以上、ラクしちゃいかんと思うんです。かつて(米国人歌手の)ダイアナ・ロスの公演を見ました。終盤になると彼女が疲れ、声も絶え絶えになってきた。でも、そこで初めて生身の人間が見えた。『がんばってるなあ』と引き込まれ、僕もそうありたいと思いました。間違えたっていい。つつがなく終わる公演より、生のよさを伝えたい」

「そりゃ体は重いですよ。走っても、きっと格好はよくない。でも、ぶざまでもがんばっている姿は感動を呼ぶと思うんです。僕はね、太ったとか、やせなさいとか言われるのが一番嫌なんです。僕は天の邪鬼だから、太って嫌われるなら、それだけのものじゃないかと思ってしまう。人間は変わっていく。誰もが老い、朽ちていくんです」

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