初期の歯周病であれば1週間くらいこれを続けると歯周病菌が減って炎症がおさまり、血管が元通りに細くなって、出血しにくくなります。
ただし、歯石は歯みがきでは取れません。歯石を放置しておくと確実にその部分から歯周病が起こりますので、歯科医院で除去してもらいましょう。
また、いつもどおりのブラッシングをしてしまうと、再び同じ場所にプラークがたまり、炎症→出血を繰り返すケースがほとんどです。この理由としてはブラッシングの方法が間違っていたり、歯並びが悪くて清掃しにくい、かぶせものの形が悪く天然の歯との間にプラークがつきやすくなっている、などさまざまなものがあります。プラークがたまる理由を調べてもらい、適宜、治療をすることで出血および歯周病の進行を抑えることができます。
■出血しなくても要注意
ところで、この記事を読んで「私は出血しません」と安心している人もいるでしょう。そのような人にぜひ、やってもらいたいことがあります。(特に日ごろ、使う習慣がない人に)デンタルフロスや歯間ブラシで、歯と歯の間をみがいてみてほしいのです。
歯ブラシでは出血しなくても、デンタルフロスや歯間ブラシをした部分から血が出てくる人はけっこういるはずです。
実は歯と歯の間は歯ブラシが届きにくいので、気づかないうちにプラークがたまりやすく、歯周病の初発部位になることが多いのです。
歯科医院では歯周病の診断のために、プロービング検査(歯周ポケット検査)という検査を行います。プローブという目盛りのついた細い棒状のもので歯周ポケットの深さを測定するとともに、歯ぐきを1本の歯の周りにつき6箇所ずつプローブで深さを測ったり、出血の有無をていねいに調べていきます。
こうした中で、歯の表はとてもよくみがけていてきれいなのに、歯と歯の間にプローブを入れた途端、「ツーッ」と血が出てくる人がとても多いのです。
出血はからだの炎症であり、異変が起こっている兆候です。吐血や下血があったら、ほとんどの人が慌てて病院に行くでしょう。それと同じように歯ぐきの出血にもぜひ、注意を払い、適切な処置を受けてほしいと願っています。
◯若林健史(わかばやし・けんじ)
歯科医師。若林歯科医院院長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演