これらをきっかけに、本来なら病原体から身を守るべき免疫が自分自身を攻撃してしまう「自己免疫反応」が強くなる。すると、毛根を含む毛包に炎症が起きて発症する。
発症から半年以内の急性期は毛包に炎症がみられている。重症化する前のこの時期に適切な治療ができれば8~9割の患者は治癒に向かう。急性期に抜け毛が続くような場合は、ステロイドを、内服や点滴により短期間に大量投与する治療が有効だ。
「急性期は、特に小さいお子さんは比較的治りやすい印象はあります。ただ、1~2割の患者さんは治癒がみられないまま慢性化していきます」(同)
「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版」で推奨される治療は、「ステロイド局所注射」と「局所免疫療法」の二つ。脱毛が頭皮の4分の1以内であれば、ステロイド局所注射で患部に直接ステロイドを注射するのが効果的という。ただし、16歳未満の小児にはおこなわない。
発症から半年を経過した慢性期になると、毛包の炎症反応は治まってしまうため、治療は局所免疫療法へと移行する。
局所免疫療法は、化学試薬により、人工的に脱毛部分に軽いかぶれを起こすことで免疫のバランスを変え、脱毛を起こしているリンパ球の働きを抑え込む治療法だ。治療は長期にわたり、開始から3年目にしてようやく髪が生えてくるという事例もある。根気よく治療を続けていかなければならないのだ。それだけに治療中の患者のメンタルケア、病気に対する周囲の理解も必要になる。
汎発型は頭髪のみならず眉毛もまつげも陰毛も、体毛すべてが抜けてしまう。頭髪であればウィッグ(かつら)を着用できるが、眉毛に関しては対処が難しい。
「まつげや眉毛といった顔の毛の脱毛の場合、化粧のできる女性はまだいいのですが、男性の場合、眉毛がないことで学校や職場などで社会的偏見などに苦しむ人も多いです。眉に医療用のタトゥー(入れ墨)を入れる人もいます」(同)