――退院された後、生活はどうなりましたか。
今までとはガラリと生き方が変わりました。入院中、あのまま二日酔いと思って寝てたらどうなったか先生に聞いたんです。すると、「死んでたでしょうね」と軽く言われて。私も怖がりだから死にたくないし、死にかけてたんだと思ってびっくりしちゃって。退院してからは生まれ変わったような気持ちです。
それまでは暴飲暴食の日々でした。よく食べて、よく飲んで。仕事も不規則なので、不摂生をしていたという自覚はあります。お酒もたくさん飲んでましたね。量は酔っ払ってるから覚えてないんですけど、ほぼ毎日飲んでました。
野菜も好きじゃなかったので食べてませんでした。お米もダイエットがてら食べてなかったです。当時は糖質制限がはやっていたころで、食べちゃいけないなと思って。スナック菓子や乾き物、いわゆるお酒のツマミになるものばかり食べてました。
血液の検査でコレステロール値が高いというのは言われたことがあります。後はいっさい大丈夫でした。で、また肝臓の数値がものすごく良かったんです。だからお酒飲んでも大丈夫だと過信してましたよね。
脳梗塞になってからは、お酒はやめました。先生から「適量ならいい」って言われましたが、大好きだから一杯で終われるわけないじゃないですか。ようやく乗ってきたころに適量になっちゃうでしょ。これはもうやめたほうがいいなと思って。で、野菜はたっぷり食べるようになりました。食べてみるとおいしいんですよね。白いご飯もしっかり食べ、お肉やお魚、納豆、お豆腐とかのたんぱく質の食べ物もちゃんと食べて……。もう子どものときみたいな食生活です。運動の習慣もつきました。今はピラティスや水泳、エアロビクスと、何でもやっています。
■80歳になっても自分の足で歩く!
――現在の体調はいかがですか。
今ではコレステロール値もすっかり下がって、他の数値もパーフェクトって言われています。血圧も先生から「低いくらいですね」と、ちょっとがっかりしたように言われるんです。
あと、お酒を飲んでた分の時間ですごく読書をするようになりました。今は活字中毒ってくらい、あらゆる分野の本を読んでます。それが発見したことの一つですね。読書の楽しみをこの年で知ったのがすごくうれしいです。違う世界に連れていってくれて、いろんなことを知っていく喜び……。知的好奇心がどんどん出てくるんですよね。
――健康上の今後の目標は?
80歳になっても自分の足で歩いていたいです。自分でご飯を作って、掃除、洗濯など、自分のことは自分でできる……。ちゃんと自分の力で生活していたいですね。発症したときは、「救急車の中では車いすになる覚悟もしていた」って夫に言われていたんです。それが今、これだけ普通に歩けているのが、本当にうれしいし、ありがたいなと。
あと、これだけはお伝えしたいです。私も発症前から飲み過ぎや食生活の乱れには気づいていたんです。もし、食べ過ぎ、飲み過ぎだと気づいている人がいたら、ちょっと今日は控えてみようかなという日を作ってみてはいかがでしょうか。
◯いその・きりこ
1964 年生まれ、三重県出身。87 年にデビュー。テレビ「はやく起きた朝は…」「行列のできる法律相談所」「ホンマでっか!? TV」など、多数の番組に出演。
(文/鈴木健太)
※週刊朝日ムック「突然死を防ぐ脳と心臓のいい病院2019」から