誤診とまではいかなくても、診断が遅れればそれだけ治療は難しくなる。わが身を守るためにも、「重病が潜んでいる痛み」は知っておきたい。身体の部位ごとに「誤解しがちな痛みのパターン」と可能性のある病気を紹介していこう。
(1)「左肩が痛い。肩こりが治らない」→「狭心症」「心筋梗塞」で命のキケンも!?
循環器内科医の安藤さんは、肩の痛みを引き起こす病気として、「狭心症」と「心筋梗塞」の二つを挙げる。肩こりや五十肩だと思って、整形外科や整体、マッサージなどに通っている人は、本当に肩が原因の痛みなのか、一度、疑ってみたほうがいいかもしれない。とくに左肩が痛んだら要注意だという。
狭心症は、動脈硬化によって心臓に酸素を供給する冠動脈の内腔が狭まり、血液の流れが悪くなって、心臓の筋肉(心筋)が酸欠を起こす病気。冠動脈が完全に詰まった状態が心筋梗塞で、酸欠になった心筋が壊死し、命にも関わる。
「最も患者数が多いのが、『労作性狭心症』。その代表的な関連痛である肩痛は、心臓に負荷をかけたり、体を動かしたりしたときに生じます。持続時間は3~5分ぐらい。一方、『急性心筋梗塞』ではガマンできないほどの強い痛みが持続します。圧迫感や、締め付けられたような絞扼感を伴うことがあります」(安藤さん)
また、動脈硬化によらない特殊な「冠れん縮性狭心症」でも関連痛として肩痛が起こる。原因はわかっていないが、発症にはストレスなどが関係していると言われている。こちらは夜間や朝など、安静時に痛むのが特徴だ。持続時間は労作性狭心症よりも長めだ。
生坂さんは関連痛と単なる肩の痛みを見分ける“目安”を教えてくれた。
「肩こりや五十肩は“肩を動かすと痛む”。一方、関連痛は“肩の動きと関係なく痛む”。痛いところを動かしてみて『イテテ!』となれば様子を見ていればよいことが多く、動かしても痛みの強さが変わらない場合は、直ちに医療機関を受診したほうがいいということです」