2年ぶりとなる全国アリーナツアーも予定しているPerfume2年ぶりとなる全国アリーナツアーも予定しているPerfume
Perfumeの新作『Future Pop』(ブルーレイディスク付きの完全生産限定盤はUPCP-9020)。特典ディスクの「Perfumeのただただラジオが好きだからレイディオ!3」を聴くと、アルバムをより楽しめるPerfumeの新作『Future Pop』(ブルーレイディスク付きの完全生産限定盤はUPCP-9020)。特典ディスクの「Perfumeのただただラジオが好きだからレイディオ!3」を聴くと、アルバムをより楽しめる
 Perfumeのニュー・アルバム『Future Pop』が発表された。2年4カ月ぶり、通算7枚目のオリジナル・アルバムだ。すでにオリコンのランキングで1位を獲得。世界251カ国で配信され、日本を含む19の国・地域のiTunesエレクトロニック・アルバム・チャートで1位になっている。

【Perfumeの新作『Future Pop』のジャケットはこちら】

 Perfumeは広島県出身の“あ~ちゃん”こと西脇綾香、“かしゆか”こと樫野有香、“のっち”こと大本彩乃による3人組テクノポップユニット。2002年にアイドル・グループ“ぱふゅ~む”としてインディーズ・デビューした。

 翌年春に上京してPerfumeと改名し、05年に「リニアモーターガール」でメジャー・デビュー。2作目のシングル「コンピューターシティ」以降、中田ヤスタカが全楽曲の作詞作曲を担当し、テクノ・サウンドと歌声を加工した独特のスタイルを実践してきた。07年の「ポリリズム」が大ヒットし、翌年の初のオリジナル・アルバム『GAME』以来、アルバムのすべてがオリコン1位を獲得している。

 今回の『Future Pop』は、カラフルなポップ・ソング満載の作品に仕上がっている。全12曲のうち、半数はテレビドラマやCMでおなじみの既発表曲。「TOKYO GIRL」は『東京タラレバ娘』の主題歌。「If you wanna」と「無限未来」は、エレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)の最新スタイル“フューチャー・ベース”を用いたことで話題を呼んだ。

 アルバムの幕開け、メンバーが“絵本の中に入っていく感じ、優しさや希望にあふれた曲”と評した演奏曲「Start-Up」が意表をつく。続いてアルバムの表題曲「Future Pop」。アコースティック・ギターによるイントロ、シンセのピコピコからドラムン・ベース風へと変化するサウンド展開がスリリングだ。歌詞は過去と未来の連鎖を物語る。

「If you wanna」は、いつも“キレイ”でありたいと願う女の子の心情を描いた歌で、何かをねだるときのようにネコなで声風のヴォーカルを聴かせる。

 
「TOKYO GIRL」はスペクター・サウンド風の重厚なドラムスに始まり、テクノ・ポップの特徴的なシンセ・リフが奏でられ、EDM的展開へと変化する。サウンドの斬新さとは対照的に、メロディーや歌詞には歌謡曲に通じる切なさ、もの悲しさが漂う。

 東京という街、都会に憧れてきた地方出身者の東京での生活。その楽しさ、喜びを享受しながら、どこかなじめていない所在のなさを隠しきれない心情が描かれる。今も3人が持ち続けている思いなのだろう。

「FUSION」は、シンセ・サウンドによるスリリングな演奏展開。タンジェリン・ドリームやヴァンゲリスが思い浮かぶプログレ的演奏に続き、シンセがらせん状に舞い上がり、ヘヴィーでダイナミック、ファンク的なシンセ・ベースがフィーチャーされていく。中田の手腕に感服する。

 新曲の「Tiny Baby」はきゃりーぱみゅぱみゅが歌いそうなポップ・ソング。甘くキュートな歌声はコケティッシュな魅力を併せ持っている。

 対照的なのが「Let Me Know」だ。歯切れのいいシンセ演奏がポップなEDM風へと変化していくサウンド。それをバックにしたPerfumeの歌声は生声っぽく、歌いぶりからは大人びた風情も。

 この曲のミュージック・ヴィデオでは、メンバー3人の子ども時代を思わせる子役3人が登場する。歌詞でも幼いころを振り返り、現在や未来への思いを描いている。3人の成長を物語る曲といえる。

「超来輪」は軽快でリズミカル。YMO風だったりする演奏やサウンドはどこか懐かしく、メロディーはチャイニーズ風。タイトルは意味もない造語で、歌詞も今は用無しになったフロッピー・ディスクやIT用語などが登場するナンセンス・ソング。ユーモラスで楽しい。

「無限未来」は、浮遊感のあるイントロからフューチャー・ベース的なスタイルへと変化。歌声は甘くキュートだが、映像も幻想的な趣で、Perfumeの大人の魅力を感じる、「宝石の雨」はシャッフル調のテクノ・ポップ。続く「天空」については、メンバー自身が“久々に取り組んだまっすぐなポップ・ソング”“アニメの主題歌にぴったりな応援歌”と語る。メロディーや四つ打ちのビートが特徴的なハウス乗りのサウンドはどこか懐かしく、かつてのPerfumeサウンドなども織り込まれている。

 
 アルバムを締めくくる「Everyday」は明るく軽快ではつらつ。ハッピーな気分になる曲だ。

 おおかたの予想に反して最新流行の演奏、サウンド展開が抑えられたのは、時が経てば一過性の流行に過ぎないものになると見据えてのことに違いない。テクノ・スタイルを基本にしたこれまでの演奏、サウンド展開の回顧を意識した点からも中田のそうした意図がうかがえる。

 かつて、テクノ・ポップにオートチューンで加工を施し、無表情でクールなヴォーカル、コーラスを共存させたPerfumeは“フューチャー・ポップ”と評されたが、中田は“そう呼ばれるには早すぎる”としていた。今回、「Future Pop」という曲をつくり、アルバム・タイトルに据えたのは、本作こそがそれにふさわしい内容だという自信の表れだろう。

 本作は、Perfumeのこれまでの足跡を振り返り、アイドルの域を脱した大人としての魅力を伝える。かつての“フューチャー”にあたる、Perfumeの“現在”の姿を浮かび上がらせている。それもこれも、中田の戦略に違いない。(音楽評論家・小倉エージ)

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中田の手腕に感服する曲とは?