これまで約170件近くの改葬交渉をしてきたプロも、住職らの理解を得ることが大事だという。東京・新宿にある納骨堂「新宿瑠璃光院白蓮華堂」の業務統括推進本部の木下尚子部長は、こう指摘する。
「墓じまいが大変な立場の人もいます。例えば檀家の総代をしている家系や、本堂そばの立派な墓の家系の人。そのような墓は寺にとって潰されたくないので、交渉はかなり難航します」
トラブルを避けるには、墓の大きさや使用されている石の質、立地場所(本堂からの近さ)などをチェック。これまでに支払った管理料やお布施額や、寺から収支報告書が届いていないかも調べておく。檀家の心得のようなものが残されていたり、離檀する場合の条件が記載されていたりすることもある。寺との関係性をわかった上で相談すると、理解を得やすいという。
東京・新宿にある納骨堂「新宿瑠璃光院白蓮華堂」の業務統括推進本部の木下尚子部長によると、古い檀家の家系で大きな敷地の墓だったのに、墓じまいの依頼者が一度も現地に行かなかったケースもあった。
「現地で撮った写真を依頼者に見せると、墓の規模が大きいことに驚かれました。ご先祖が寺の建立に力添えしていたため、管理費が免除されていたことも知らなかった。この依頼者は結局、墓じまいできませんでした」
関係がこじれた住職から、管理費を長年滞納していたとして一度に請求された人もいたという。
離檀料や管理費などは法律的な根拠に乏しいものもあり、要求どおりに支払う義務は必ずしもない。経済状況が厳しければ、多額の支払いはできないことを率直に話そう。
【墓じまいを成功させる10のポイント】
1.元気なうちに着手する(適齢期は75歳)
2.墓の歴史や寺との関係性を把握しておく(寺院墓地の場合)
3.墓じまいの理由や目的をまとめておく
4.独断で進めず、墓を将来見守る子どもたちの意見も聞く
5.実際に墓石を見て、場所、大きさ、石材の質をチェックする
6.住職に会って説明。電話や郵便で急に改葬許可申請書へのサインを求めない(寺院墓地の場合)
7.住職には墓じまいの理由や、経済的な事情を率直に伝える(同)
8.墓じまいの予定を貼り紙やボードで示し、墓参者に告知する(1年以上前が望ましい)
9.取り出す遺骨の情報を墓標や過去帳などで把握しておく
10.墓じまいと同時進行で遺骨を移す先を検討する
(本誌・大崎百紀)
※週刊朝日 2018年8月31日号