歯を失う原因の第1位はむし歯ではなく、歯周病。絶対にかかりたくない疾患ですが、日本人の約7割が歯周病という驚愕の数字を聞きました。これってあまりに多すぎませんか? 本当だったら歯周病に気づいていない人が大量にいることになりますが……。テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に聞きました。
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厚生労働省が実施する歯科疾患実態調査(2011年)では「歯肉の状況」を調べる検査から、歯周病のある人が20代で約70%、65歳以上の高齢者では歯のない人を除くほぼ全員という結果が得られました。
また、より若い人も例外ではなく、15~19歳では軽度ですが約65%に歯周病が見つかりました。これらの数値から日本歯周病学会が算出した結果が7割で、残念ながら事実なのです。
なぜこれほどまでに歯周病の患者数が多いのでしょうか?
第一に、むし歯と違って、歯周病は初期のうちは自覚症状にとぼしく、病気に気づきにくいことがあると思います。
歯周病の原因である歯周病菌は空気が大嫌いな「嫌気性(けんきせい)菌」で、歯の表面ではなく、空気が届きにくい歯と歯ぐきのすき間を好みます。そして、食べかすをエサにプラーク(歯垢)を作りながら、さらに歯ぐきの奥へ、奥へと歯周組織を侵しながら進んでいきます。
この間、炎症によって歯ぐきが腫れたり、出血したりという症状があらわれますが、痛みがないため、これだけで「歯周病かな?」「歯医者に行ったほうがいいかな」と思う人は少ないのです。
実際、歯周病による口の中の変化は見た目にもわかりにくいものです。「歯の調子がなんとなく悪い」(歯周病かもしれないという疑いは患者さんにはないことがほとんど)といってやってきた患者さんに、歯周病による歯ぐきの腫れを指摘すると、
「毎日、鏡でチェックしていたのですが、ピンク色なので、歯ぐきは健康だと思っていました」
という人が多いのです。