上手に要望を通すには、「声なき声を聞いてもらう入居者」になるほうが得策だ。一方、職員に遠慮しすぎて要望を伝えられない人も多い。「要望が5あったら3は伝えてもいいのでは」と前出の小山さんはアドバイスする。職員が不快にならない伝え方もポイントなのだ。

 反対に嫌われる入居者の特徴は何か。介護職経験者が口をそろえるのが、「元○○会社の取締役だった」など、現役時代の肩書を持ち出して高圧的な態度をとる人だ。

「職員を自分の部下のように扱い、お茶の出し方を指導したり命令したりするので見事に嫌われてしまうのです」(小嶋さん)

 また他の入居者とのやり取りに口出しをする人も嫌われてしまう。たとえば、食事介助をされている認知症の入居者に、「なんでご飯をちゃんと食べないのか」といきなり水をかけるなど、乱暴を働く人もいる。

 家族の対応も重要だ。ある現役の介護職員は「家族が毎日来てべったり一緒にいるので、本人と話す機会が少なくなった」と話す。また持病がある入居者には、職員が食事の調整を綿密におこなっている。それなのに、家族が毎日来てお菓子を食べさせてしまうなど、施設のルールを守れない家族は職員を困らせる。

「要望がある場合は、まず生活相談員に伝えるのがよいでしょう」(小嶋さん)

 一方家族は最低限、盆暮れ正月には顔を出したほうがよい。家族が来ると、職員は日頃の様子を報告する。家族の目があることで、職員はその人をより注意してみるようになるという。(本誌・井艸恵美)

週刊朝日  2018年8月17-24日合併号より抜粋

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