古本屋通いの体験四コマ漫画を本にした『古本乙女の日々是口実』(皓星社・1000円)。著者のカラサキ・アユミさんにお話を聞いた。
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今回の取材で、東京・神田神保町のビル内の古書店を訪ねると、店主から「取り置きしておきました」と、昭和40年代のエロ雑誌を手渡された。「エロ本を棚買いした女」という噂は本当のようだ。
「あの話は、ツイッターで知り合った人から、私が好きそうな本が出ていると教えてもらい、急いでお店に電話したことが始まりなんですよ」
「60冊くらいあるかなぁ。『週刊実話』『SMセレクト』とか……」という店の説明を聞いて注文。その時、カラサキさんが携帯電話で話していた場所は、当時勤務していたアパレルブランドの職場のトイレだった。一刻を争うには理由がある。古書の即売会では「これという本は一瞬で売れる」からだ。
本書に収録されている漫画のワンシーンを、詳しく再現してもらった。最先端を行く服の販売員と古本趣味とのギャップがおかしい。
「でも、私が好きなエロはエロすぎないエロで、ビニ本とかモザイクはアウトで。バカだなぁ、ハハハというのが好みなんです」
古本屋通いの体験四コマ漫画のほか、ふらりと立ち寄った家族経営の中華料理店の天津飯が食べたくなってしまう古本屋探しの旅日記、古本の魅力を綴ったエッセイなどを組み合わせた本書。古書店でよく見かける「一筆書き」のようなタテ型の帯が巻かれ、思わず剥がしてみたくなる値札シールが印刷されるなど、遊び心が満載だ。
「帯の字はうちのおばあちゃんの字。今年95歳なんですが、書道の師範代の免状を持っていて。冥途の土産に書いてよと頼んだら、『いいよ』って。震える手で書いてくれました」
自身の古本屋通いをたとえて、「蝶々を追いかける子供」のようだという。6歳ぐらいの頃、「変わっとる子やねぇ」と古物店のおじいさんに言われながらも、色鮮やかな浮世絵を母親に買ってもらい、模写していたのをよく覚えている。