「奥さんとオウムの元広報副部長でアレフ幹部の荒木浩さんとは密なコミュニケーションがあると聞いたから、遺骨の一部が簡単に教団に渡るのではないかと心配する人もある。奥さんや三女が教団関係者に骨を渡さないと言っているそうだが、長い年月が経ったら、どうなるのかは私にもわからない。分骨したことが騒動になるんだったら、警察が捕まえればいいのでは」

 中田氏はオウム真理教の前身の「オウム神仙の会」のころ、ヨガの魅力に惹かれて入信。元山口組系暴力団組長という経歴から「裏の実行部隊長」と言われた。松本元死刑囚の死に対してどういう感情を抱くのか。

「いくら死刑囚とはいえ、殺されることでもう罪を償ったわけだから、あとは普通に供養すればいい。私は焼かれた骨に興味はない」

 中田氏はオウムにいたころ、「建設省」に所属。トップだったのは早川紀代秀元死刑囚。死刑が執行された早川元死刑囚についてはこう回想する。

「早川の部屋には、武器商人が持っているような拳銃や戦車、軍艦のサンプル本が何冊もあった。赤坂御苑を攻撃するためのポイントを書いた地図、国会をハイジャックしようという計画もあった。早川は麻原には内緒で北朝鮮経由でロシアに入ったりして、彼個人で活動していたような部分もあった」

 残る6人の死刑囚の執行はどうなるのだろうか。

「死刑になった人は明日執行されても、あさって執行されても文句は言えないが、残りの6人も年内に執行される可能性がある。来年は新天皇の即位する年だから、来年は死刑が執行しづらい。邪魔者は消せになるかもしれない」

 中田氏は昨年12月、岐阜県高山市の自宅で長男を刀で切りつけてケガを負わせたと、殺人未遂の疑いで現行犯逮捕された。

「ただの親子げんかです。病気で療養中の元奥さんが警察を呼んだ。長男の作った示談書で取り下げになるところが、検察官のところですったもんだして時間がかかって、起訴され、執行猶予付きの刑になりました。今も、元奥さんと長男と細々と暮らしています。元オウムの出家信者だということで、いまだに世間の風当たりは厳しい。他の元信者たちもたたいたらかわいそうだよ。みんな必死で生きていこうとしている。逆にその人たちに仕事を与え、生きていける環境を整えてあげるべきではないか」

(本誌・上田耕司)

※週刊朝日2018年7月27日号

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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