田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
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トランプ氏は、北朝鮮の非核化に、どの時点で決着をつけようとしているのか(※写真はイメージ)
トランプ氏は、北朝鮮の非核化に、どの時点で決着をつけようとしているのか(※写真はイメージ)

 米朝首脳会談後、北朝鮮非核化の費用について、韓国と日本が負担すべきとトランプ大統領が発言した。ジャーナリストの田原総一朗氏は、日本の今後について言及する。

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 6月12日の米朝首脳会談を受けて、翌13日の日本の新聞各紙の論調は、事前に話し合ったかのように一致していた。通常、政治的出来事になると、朝日や毎日に対して、読売、産経は大きく異なるのだが、米朝首脳会談については一致していた。どの新聞もトランプ大統領の本意がつかめなかったのではないか。

 会談前に北朝鮮に飛び、金正恩委員長とじっくり会談しているポンペオ国務長官は、北朝鮮の“完全かつ検証可能で不可逆的な非核化”、CVIDを求める、と強調していた。だが、共同声明の中にCVIDは盛り込まれず、いつまでに実施するのか、という期限も示されなかった。

 そして、北朝鮮の“体制を保証する”と、トランプ氏は約束したのである。しかも、北朝鮮にとって脅威である米韓合同軍事演習の中止と、在韓米軍の撤退にまで言及した。

 こうしたことで、日本の新聞各紙は、米朝会談は北朝鮮優位に終わったのではないか、と報じた。米国でも会談の評価は是非が相半ばしている。歴代大統領が行えなかった米朝会談を実現したことは評価できるが、会談の内容については問題あり、だというのである。

 それにしてもトランプ氏は、北朝鮮の非核化に、どの時点で決着をつけようとしているのか。本当は、金正恩氏は完全な非核化は考えていないのではないか、と捉えている専門家が米国にも日本にも少なくない。

 リビアのカダフィ大佐は米国による完全非核化を受け入れて、結局殺された。イラクのフセイン大統領も核兵器を持ち得なかった故に、米国に潰された。金正恩氏はそのことをよく知っている。人口が韓国の約半分で、経済力でも劣る、いわば弱小国の北朝鮮が、超大国である米国の大統領と対等に会談できるのは、核兵器を所有しているからである。核兵器を廃棄すれば、ただの弱小国になってしまうはずである。

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