放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「階段を下りる勇気」をテーマに送る。
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ドラマ「おっさんずラブ」が大ブームになった。そして俳優・田中圭にかなり光が当たっていて嬉しい限りです。彼とは「芸人交換日記」という舞台と、昨年「僕だってヒーローになりたかった」という舞台を作りまして、彼の役者としての力量をかなり強く感じていました。いろいろなドラマに出演するし、とにかく役者としての力もかなりあるので、仕事は次々に来る。だけど、僕としては歯がゆいわけです。業界にも世の中にももっと評価されてよいのにと。
ドラマや映画の主役を演じる役者さんには2タイプいると思っています。
主役が似合う主役俳優と、主役以外でも実力を発揮するタイプ。主役俳優さんは、その選ばれた人にしかない華とスター性があるからこそできる役がある。だけど、問題は、若いうちにその座席に座ってしまった人は主役ではない役をやりにくくなってしまうこと。
僕はこれを「階段を下りる」という表現を使うのですが、なかなか階段を下りることができず、主役にこだわり、年と共に微妙な立ち位置になっていく主役俳優・主役女優さんは少なくありません。
はっきり言うと、田中圭は主役俳優ではありません。だけど、だからこそ、力でのし上がり、主役をやるときもあるし、脇で力を発揮することもできる。階段を上り下りできる俳優さんなのです。
そして何より、受けの芝居がめちゃくちゃうまい。芝居に「攻め」と「受け」があるとするなら、田中圭はその「受け」芝居がとてつもなくうまいのだ。
たとえば、「おっさんずラブ」は吉田鋼太郎さんと林遣都君が強烈な攻め芝居。芸人さんでも、ボケとツッコミで言うと、ボケが強烈なほうが目立つし、そっちのほうが人気も出やすい。だけど、超うまいツッコミや通訳がないとその強烈なボケは生きないこともある。