ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。欧州連合で変わる個人情報保護について解説する。
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欧州連合(EU)は5月25日、欧州経済領域(EEA=EU28カ国およびアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー)について、個人情報保護を目的とする「一般データ保護規則(GDPR)」の適用を始めた。EEA域内の個人情報を収集・使用する企業に、どのような内容の情報を、どのような理由で収集し、どのように使用するのかをわかりやすく示した上で、個人の同意を得ることが義務づけられる。
GDPRでは個人情報を「識別されたまたは識別されうる自然人に関するあらゆる情報」と定義しており、その範囲は極めて広い。氏名や住所、識別番号、メールアドレス、IPアドレスやクッキーといったオンライン識別子、位置情報、写真、ソーシャルメディアへの投稿など多岐にわたる。
さらに、人種や政治信条、性的指向、診療記録、犯罪歴など、他人に知られた場合に不利益につながりうる情報には、より厳格な要件が設定されている。
違反した場合の罰則は厳しい。最大のケースでは、2千万ユーロ(約26億円)、または前年売上高の4%のいずれか高いほうが、制裁金として科される。
GDPRのインパクトが大きいのは、適用される範囲がEEA域内に留まらないところだ。「EEA域内の個人の情報を扱う」全世界の企業に適用されるため、日本企業にとってもひとごとではない。特にEEA域内に子会社や支店を置いたり、商品やサービスを提供したりしている企業は、対応が急務だ。
GDPRの最大のターゲットは、ユーザーの個人情報を幅広く収集し、利益につなげてきたグーグルやフェイスブックを始めとする大手プラットフォームだ。
これまでは細かい文字でびっしりと書き込まれた、いわば「読まれないことを前提とした」利用規約への同意にもとづいて、個人情報を集めてきた。これが認められなくなる。ユーザーが企業が管理する個人情報の内容を確認し、求めに応じて修正・削除できるようにもしなければならない。