津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)
ツイッターが荒らし行為の対策として発表した「行動シグナル」(※写真はイメージ)
ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。ツイッターが荒らし行為の対策として発表した「行動シグナル」について解説する。
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ツイッターは5月15日、会話の健全性改善の一環として、荒らし行為への新たな対策の実施を発表した。「行動シグナル」と呼ばれる指標をもとにした行動パターンの分析により、荒らしユーザーを特定し、その投稿の表示順位を下げるのが骨子だ。
ツイッターはこれまで、トロール(荒らしと呼ばれる迷惑行為を繰り返すユーザー)への対処に苦慮してきた。自由でフラットな情報流通プラットフォームとして成長してきたが、その半面、中傷や嫌がらせ、荒らし行為の温床ともなっていた。
たとえば2016年7月には女優のレスリー・ジョーンズが、多数のトロールから人種差別的な罵声を浴びせかけられひどい中傷を受けたとして、ツイッターの更新停止を発表している。その際、ツイッターは攻撃を扇動した一部のアカウントを永久凍結することで対応したが、根本的な問題解決に向けた対策が示されることはなかった。
著名人が標的にされやすいとはいえ、一般のユーザーがトロールの攻撃を受けることも少なくない。こうした状況を長らく放置し続けてきたことが、ユーザー離れや成長鈍化の一因として度々指摘されている。
昨年12月には暴力の扇動やヘイトスピーチを禁止し、違反したユーザーのアカウントを凍結するなどの措置を講じているが、トロールや嫌がらせの問題の解決には至っていない。
ツイッターによれば、「悪意のある行為」として通報されるツイートの大半が、明確な規約違反ではないためだという。このように規約には違反していないとしても、健全な会話を阻害する迷惑行為をどう扱うべきか、同社は判断のむずかしい問題に直面している。
今回、ツイッターが打ち出した行動シグナルにもとづく表示順位の低下は、まさにこの問題の解決を目指している。
ツイートそのものは削除せずに、ほかのユーザーの目に触れないようにするというのがポイントだ。攻撃的なツイートが検索結果やリプライを通じて第三者に可視化され、更なる攻撃を招く状況が起きている。今回の措置はまずそうした「割れ窓」効果を防ぐことが目的と言える。
実際にこの対策をテストした結果、「悪意のある行為」の報告は検索結果で4%、リプライ欄で8%減少したそうだ。根本的な解決には程遠い措置かもしれないが、問題解決への第一歩としてどのような効果を上げられるのか注目したい。
※週刊朝日 2018年6月1日号