日産自動車の都内の販売店(撮影/多田敏男)
日産自動車の都内の販売店(撮影/多田敏男)
ノートとプリウスの販売台数(週刊朝日 2018年5月25日号より)
ノートとプリウスの販売台数(週刊朝日 2018年5月25日号より)
eパワーを初めて搭載し人気となった「ノート」(上)、eパワー搭載モデルが3月に発売されたミニバン「セレナ」(下)=日産自動車提供
eパワーを初めて搭載し人気となった「ノート」(上)、eパワー搭載モデルが3月に発売されたミニバン「セレナ」(下)=日産自動車提供

 過去最高の2.4兆円も稼ぎ絶好調のトヨタ自動車。かつてライバルだった日産自動車は一時経営危機に陥ったこともあり、国内では存在感が薄れていた。だが、ここにきてシェアが上昇している。エンジンは発電だけに使いモーターだけで走るハイブリッド車「e-POWER」(eパワー)で大攻勢に出ているのだ。日産がトヨタを食う日は果たしてくるのか。

【グラフで見る】どう変わった?ノートvsプリウス 販売台数の推移はこちら

「2025年度までに国内販売台数の2台に1台以上が電動駆動車になる」

 日産は4月20日に発表した中期計画で、こう強気の目標を掲げた。

 環境に優しく運転支援で事故も起こしにくい新型車を投入し、トヨタに挑む。武器は充電不要の電気モーター走行システムのeパワーだ。22年度までに、このシステムを搭載する5車種を国内向けに売り出す。

 eパワーはすでに高く評価されている。16年11月に初めて小型車「ノート」に搭載。日本自動車販売協会連合会によると、同年11月にいきなり1万5784台を売り上げ、日産車として往年の人気車「サニー」以来、約30年ぶりに新車販売台数で首位となった。その後も好調で、トヨタの「プリウス」を上回る月も度々あった。

 人気の秘密は燃費がいいことに加え、独特の乗り心地だ。モーターは発進時の瞬発力に優れているため、アクセルを踏むと流れるように加速する。

 アクセルペダルだけで加減速もできる。転がるタイヤの力をモーターに伝えることで、電気を生み出す「回生ブレーキ」がかかるためだ。慣れるとブレーキを踏まなくても、アクセル操作だけでかなり対応できる。日本では渋滞が多く、加速と減速を何度も繰り返さないといけない。そんな場面では、eパワーだと運転が楽になるのだ。

 ノートの成功を受けて、今年3月からはミニバン「セレナ」にも搭載した。3月の販売台数は1万5080台で、軽自動車を除く登録車でノート、トヨタのプリウスに次ぎ3位と健闘している。

 日産では昨年9月に無資格検査問題が発覚し、国内販売が一時的に落ち込んだ。足元ではノートやセレナが好調なため、乗用車の国内販売におけるシェアは上昇傾向だ。今年1~3月は約13%で、前期(昨年10~12月)より約5ポイント上昇。逆にトヨタは1~3月は約28%と前期より約5ポイント低下。日産がトヨタのシェアを奪い取った格好だ。まだ倍以上の差があるので逆転は簡単ではないが、eパワー効果で今後もシェア上昇が期待できそうだ。

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