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歯科治療は、保険診療か自費診療か自分で選ぶことができます。値段と品質のはざまで、どちらの治療を選べば良いか頭を悩ませた患者も多いはず。実際、どちらが「いい歯」をつくれるのでしょうか。週刊朝日MOOK「いい歯医者2017」では、気になる治療費のギモンを歯科医師に尋ねました。
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自費診療と保険診療。できあがった歯の使い勝手はどのくらい違うのでしょうか。やはり、自費で作ったもののほうが「いい歯」なのでしょうか?
クラジ歯科医院院長の倉治ななえ歯科医師は、「その人が何を重視しているかによるのではないでしょうか」と話します。
「日本の歯科技術は世界的にも優れていますから、保険診療で作った歯も十分に『いい歯』だと思います。でも、価値観は人によって違います。可能な限り天然歯に近い歯で外見を整えたいならセラミックがいいですし、歯の根に負担をかけずピッタリ合う歯がほしいなら金がいい。また、保険で作る歯は耐久性に劣るので、時期が来たらはずして作り直す必要があります。そうすれば、土台になる歯の寿命も短くなってしまいます。自分の歯を長持ちさせたい場合にも、自費の歯はおすすめです」
千駄木あおば歯科院長の谷田部優歯科医師は「残念ですが、保険の料金で自費と同レベルのものは作れません」として、こう説明します。
「保険の銀歯を1本作った場合、歯科技工士に入る収入は2千円から2500円です。一方で、1本の歯を作るのにかかる時間はというと、工程がいくつもあるので、一人で全部やると約3時間はかかってしまうのです」
2千円で3時間? もしかして、国が定める最低賃金より安いではありませんか!
「ですから、少しでも効率化するために作業を分担制にして、流れ作業のように作っている技工所は多いようです。その違いが、歯がぴったり合うかどうかの違いになって表れます。結果的に自費のほうができあがりのレベルが高くなるのは、やむを得ないのではないでしょうか」(谷田部歯科医師)
倉治歯科医師も言います。
「志のある歯科医師や歯科技工士が、保険診療の中で活躍できなくなるのであれば日本の歯科医療界にとって非常に残念なこと。高い技術のバトンが、次の世代にもきちんとつながるような保険制度であってほしいと思います」
ものを食べ、顔の印象を左右する歯は、一人ひとりの人生に寄り添う存在といえるでしょう。懐事情は人それぞれですが、歯を人生のパートナーとして十分考えて選んでほしいと、若林歯科医院院長の若林健史歯科医師は言います。
「私の奥歯には40年前に入れた金合金のクラウンが入っていて、ずっと現役で活躍しています。これは尊敬する歯科医師でもある私のおじが、私のために作ってくれた歯です。その人にふさわしい材料と高い技術で作られた歯は、一生ものになり得るのです」
◯取材協力
千駄木あおば歯科 院長
谷田部優歯科医師
クラジ歯科医院 院長
倉治歯科医師
若林歯科医院 院長
若林健史歯科医師
(文・神 素子)
※週刊朝日MOOK「いい歯医者2017」より
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