「実際何かが起きると、身動きが取れなくなり、せっかく買った物件を手放さざるを得なくなるケースも出てくる。こうした事態を招かないためにも、住宅を買うのはよほど慎重に考えたほうがいい。少なくとも『家族のかたち』が固まるまで待つことを勧めます」(藤川さん)
確かに、住宅は最も高い買い物だから、藤川さんの意見はもっともだ。超低金利で多額の借り入れが可能になったことが、若い世代の背中を押しているのだろう。ここでも親世代の経験が役に立つかもしれない。金利が高いときの住宅ローン返済は大変だった。当初は利息返済がほとんどで元本が減らない、ボーナスからもごっそり持っていかれる……。子供が住宅購入を言いだしたら、当時のことを話してやるのも手だ。
「藤川理論」は企業経営と同じく、費用が多くかかる部分から対策を考えるのがミソだ。だからこそ住宅ローンが議論の中心になるのだが、一生を通じたマネー戦略で言うと、もう一つ、知っておきたいことがある。人生には「貯め時」と「使い時」があることだ。
子供がいる場合は貯め時と使い時がそれぞれ2回、子供がいない場合は1回ずつだ。
「子供がいる場合がわかりやすいですね。生まれると同時に教育プランが決まるからです。子供が高校・大学へ行くころになると、住宅ローンの返済と教育費の負担が重なり、貯蓄ができない状態になります。だからこそ、そこへ向けてお金があまりかからないときに貯蓄に励む。人間は目標がないとお金を使ってしまうものです。使い時がいつで、どれぐらい続くか予想できれば、準備することができます」(藤川さん)
子供が大学を卒業する時期もわかるから、気が早い話だが、老後資金のための準備を始める時期もわかる。要は「人生とお金」で、今、何をすればいいのかがわかるのだ。(本誌・首藤由之)
※週刊朝日 2018年2月16日号