ビューティ・オブ・サドネス/シーネ・エイ
ビューティ・オブ・サドネス/シーネ・エイ
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デンマークの若手女性歌手ではピカイチの実力者
The Beauty Of Sadness / Sinne Eeg (VideoArts Music)

 タイムリーな来日記念盤である。今回《富士通コンコード・ジャズ・フェスティヴァル》に出演するシーネ・エイの追加プログラムを、5月25日にTokyo Tucで観た。

 フライヤーにはシーネとブルース・ハマダの名前が大きくクレジットされている。ファースト・セットはまずシーネを除くカルテットが演奏。中盤までは“ハワイの歌うベーシスト”と呼ばれるハマダのヴォーカルもフィーチャーした。その後ようやくシーネが登場すると、映画音楽のスタンダード・ナンバーを中心に進行。リーダー作収録曲「春の如く」は少しテンポを落として、じっくりと表現したのが印象的だった。東京では初めてシーネを観るファンも多いと思われ、アルバムのイメージと変わらない歌唱力をすべての人々が堪能したはずだ。特にヴォーカリストの場合、ライヴでがっかりさせられる場合もあるのだが、シーネはデンマークの若手女性歌手ではピカイチの実力者であると断言できる。

 昨年プロモーションのために来日した時にインタヴューを行い、ミニ・ライヴを観て、シーネの魅力を改めて実感した。まず歌がしっかりしている。母国の音楽院で学び、サラ・ヴォーン、ベティ・カーター、ナンシー・ウィルソンといった米国黒人歌手から影響を受けて、基礎体力を養ったことは大きい。邦人女性歌手も取り上げる名曲も、シーネが歌うとやはりモノが違うなと感じられるのだ。昨年リリースの前作『ブルーな予感』では北米のオーガニック・シンガーに通じるポップな感性も認められ、作詞・作曲の才能も発揮した。

 この新作は、スモール・グループにデンマーク国立室内オーケストラが加わって、シーネのヴォーカルを輝かせている。#1はシーネが以前、ビートルズのトリビュート・コンサートで歌ったことがある楽曲。スキャットを交えた表現力豊かな歌唱に魅了される。シーネの自作#2は2003年のデビュー作収録曲の再演。ピアノ・トリオをバックにした初演に対して、ここでは曲調は同様ながらよりじっくりと歌い込んでおり、声には重ねてきた経験が表れている。自作曲の再演と言えば、2007年リリース作のタイトル・ナンバー#4もそうだ。実体験を基に書いたラヴ・ソングを、ストリングスを得た歌唱によってコクの深い味わいに仕上げた。初期のレギュラー・ピアニストだったマーティン・シャックの楽曲にシーネが歌詞をつけた#5も、起伏に富んだシーネの歌唱テクニックが素晴らしい。カヴァー曲ではジミー・ロウルズの#7で声域の広さを印象付け、ミシェル・ルグランの#9で歌詞世界をドラマティックに描写する。全体を通じて優れたアレンジが感動を呼ぶストリングスの起用は、シーネの意図がずばり奏功。ヴォーカリストとしてステージ・アップした充実の新作だ。

【収録曲一覧】
1. Strawberry Fields Forever
2. Silence
3. So Now You Know
4. Waiting For Dawn
5. The Beauty Of Sadness
6. I Have The Feeling I Have Been Here Before
7. The Peacocks
8. Love Is A Time Of Year
9. The Windmills Of Your Mind
10. With Or Without You

シーネ・エイ:Sinne Eeg(vo)(allmusic.comへリンクします)
ヤコブ・クリストファーセン:Jacob Christoffersen(p)
ピーター・アースキン:Peter Erskine(ds)

2012年作品

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