ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。「仮装通貨」を使い、猫を取引するゲームについて解説する。
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高騰を続け、バブルではないかともささやかれる仮想通貨「ビットコイン」。ネット上では似たような仮想通貨が存在している。ビットコインのライバルはたくさんあるが、なかでも最近注目されているのが「イーサリアム」。この技術を使って“仮想子猫”を取引するゲーム「クリプト・キティーズ(CryptoKitties)」が大流行しているからだ。
イーサリアムのブロックチェーン(分散型台帳技術)を使ったこのゲームは、仮想子猫を育成し、ほかのユーザーと交換することを楽しむ、いわばポケモンのような存在。11月28日に公開されるやいなや、イーサリアムのユーザーを中心に人気が爆発した。
ゲームのシステムは非常にシンプル。プレーヤーはイーサリアムの内部仮想通貨「イーサ」で仮想子猫を購入し、他のプレーヤーの仮想子猫と交配させて、仮想子猫を増やしていく。仮想子猫は256ビットの固有ゲノム情報を持っていて、両親のゲノムの掛け合わせとランダム要素によって、生まれてくる仮想子猫の毛の色や模様、ヒゲ、出産周期などの特徴が決定される。開発会社アクシオム・ゼンによれば、その組み合わせはなんと40億通りにものぼるという。
単に仮想子猫を増やし集めていくだけの収集ゲームのように思われるかもしれない。だがクリプト・キティーズが人びとを引きつける最大のポイントは、換金可能な仮想通貨のイーサを介して行われる仮想子猫の取引だ。育てた仮想子猫を販売することができ、それによってゲームをプレーしながらブリーダーのように収入を得ることができるというわけだ。
実際に開始から1週間足らずで5万匹の子猫の売買が行われ、総取引額は660万ドル(約7億4千万円)にも及んだ。なかには1匹1千万円を超える取引もあったというから驚きだ。