100万部のベストセラー『生きかた上手』などで知られる聖路加国際病院名誉院長の日野原重明さんが今年7月に亡くなった。ねむの木学園理事長・学園長の宮城まり子さんが、同学園理事に日野原先生(同学園理事長代行)の訃報を伝える手紙があった。
* * *
1月の半ば、聖路加国際病院 日野原重明先生からお知らせを受けました。
「ちょっと調子が悪いから、今月の理事会、休ませてください」
「お大切にしてください」と私は電話を切りました。
しかし、3月、「理事は無理」との知らせを受けました。
私は言ってしまいました。「先生はねむの木学園の理事長代行、私が死んだら先生が代行してくださるお約束ですわ」
でも、私はわかっていました。先生の病気がとてもお悪いことを。毎日のようにこっそりと聞いていましたから。
7月18日、永眠。そして、7月29日に青山葬儀所でお葬式。式場で一番前に座らせていただきながら、泣きませんでした。お知らせのあった日から泣きすぎていましたから。
日野原先生いってらっしゃい。たくさんのお花の中、真っ白いお花の中、ほんのりピンクがまじり、うす紫の花が微笑みを添えていました。
「先生、美しいわ」
外に出てからいっぱい泣きました。
そして、私は、ねむの木学園の理事長だ。理事の皆様になんとお知らせを書いたらいいのだろう。私は書けないようと一言をいいながら、何日か後に迫っている「グランシップ音楽の広場」が目に見えていました。
600人ものクラシックのミュージシャンの中でコーラスすることになっていました。演出、振り付け、こども達のレッスン。雨が降ったり、晴れたりの天気のせいか、嫌な病気が走り回っていました。幼児、子供たち、高齢者、みな障害を持っていますから、弱いです。夜中の熱発、嘔吐など、救急車の走り回る中で、毎晩起きていました。幸い今は落ち着いて天気になりました。
10月22日は、運動会でした。今年の運動会は喜んでいただけると思います。ああ大変だァ。お弁当はねむの木名物「かぐや姫弁当」。私、一生懸命つくりますね。秋の空のもと、新しい竹をきった中にこめたお弁当。昨年末、私は運動会の演出できるのかァと思っていましたが、どうにかできそうです。どうぞ今年もお顔を見せて下さい。長い手紙になりました。日野原先生、指揮しに来て下さい。
(本誌・吉嵜洋夫)
※週刊朝日 2017年12月22日号