文在寅(ムンジェイン)大統領はすぐに、トーマス・バッハIOC会長と「緊密な連携をとっている」と発表し、オリンピック開催への懸念を払拭することに追われた。

 結局、フランスは不参加発言を撤回し、11月1日現在、平昌オリンピックへの参加申し込みは史上最多の92カ国・地域が登録したと伝えられた。

 しかし、これも北朝鮮と米国の動きでどう変わるかわからない。

 さらに悩ましいのは、韓国内でさっぱり盛り上がらないことだ。

 9月に文化体育観光部が行った世論調査では、「平昌オリンピックに関心がある」と答えた人は39.9%。こうした関心の低さは入場券の売れ行きにも表れていて、10月30日現在の販売率は31.8%と寂しい状態なのだ。

「それもこれも崔順実(チェスンシル)事件のせい」と話すのは平昌オリンピックの開・閉会式が行われる地元、大関嶺面(テグァンリョンミョン)の不動産業者だ。

 崔順実事件とは、昨年10月に発覚し、大騒ぎになった朴槿恵(パククネ)前大統領の友人、崔順実氏による国政介入事件のことだ。

「崔順実事件で、予算に支障が生じたとか理由をつけられて村内の整備工事も9月に入ってようやく始まりました。あの事件から、平昌オリンピックというと『利権』といった冷たい視線がとんできて、イメージががくんと下がった。みんな関心がない。あの事件さえなかったらと思わずにはいられませんよ」

 崔氏は、朴前大統領を後ろ盾に財閥企業などへ賄賂を強要したとされ、現在、斡旋収賄罪などの疑いで裁判中だ。

 そして、一連の疑惑の中には平昌オリンピックの建設利権も含まれていた。前出記者はこう言う。

「崔氏が平昌オリンピックの利権に関わった疑惑は明らかにされていませんが、この一件を巡っては、2人目のオリンピック組織委員長・趙亮鎬(チョヤンホ)氏が辞任に追い込まれました。

 趙氏は、韓進(ハンジン)グループ会長で経営に専念するといって委員長職を辞任しましたが、崔氏が推薦した建設業者の入札を断ったため、崔氏に疎まれて辞めさせられたといわれています」

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