そもそも国会の質問時間が野党に多く割かれている理由は何か。それは与党の謙虚さなどではない。政策をつくるのは当然ながら与党の役割である。そして政策をつくるためには、何を政策にするのか、いわば企画から始まるわけだ。企画とはアイデアを出してそれをまとめることで、当然ながら与党の議員ならば誰でも党内でアイデアを出し、その根拠を説明することができる。もちろん政策の数に制限はなく、いくつでも企画することができるわけだ。

 与党の議員たちは、むしろ誰もが政策のためのアイデアを考えて提案すべき立場であり、1人ではなく何人かでグループをつくって政策を提案するケースもあるだろう。そして政策の提案がほぼ出尽くしたと与党の政調会長あたりが判断すると、どの政策を国会に提出するかという検討に入り、政策の内容を修正する作業も必要になる。当然ながら、与党の議員たちはこうした作業に参加し、自分の意見を自由に述べることができるはずだ。

 与党で論議してまとまった政策が国会に提出されるのだから、国会での質問時間は野党が中心になるのは当たり前だ。野党は与党とは考え方が異なり、しかも国会で初めて政府から新政策を示されるのである。それに、与党の質問はほとんどが政策案に対する擁護であり、このような擁護のための質問時間を増やすのは、とんでもないことである。

週刊朝日  2017年11月17日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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