

落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は、「趣味」。
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私、趣味がないのです。
寄席で落語を聴いたり、素人だてらに見よう見まねで喋ったりが趣味だったのに、運良くそんな職業になってしまいました。よく「趣味が仕事だなんてうらやましい」と言われます。そんな時は「趣味にしとくうちが花ですよ。趣味に責任がともなうのはツライですねぇ……(ため息)」と返します。
嘘ですよ。べつにそんなつらくないっす。本音を明かせば「ハハー、いーでしょー! 責任なんかまるで感じてないもんねー!」ってなもんです。けっこう楽しいよー。
はっきり言って、私は落語以外に趣味は必要ないのです。必要ないんですが、プロフィールに「趣味 落語」とか書いちゃったらかなりの勘違い野郎臭が漂います。わき目もふらず一心に「自分、これ一筋だもんで」みたいな。こっぱずかしい。
ということで、なんかプロフィールに書けるような趣味が欲しいのですが、いかんせん腰が重い。なにをするにも「石橋を叩いて渡る」どころか、叩く前に腕をストレッチしてる合間にめんどくさくなって寝てしまう……くらいの無精者。これは!という趣味が見つかりません。
映画? だいたい1年に10本も観ない人間はプロフィールに「趣味 映画鑑賞」って書いちゃダメでしょ? すいません、書いてます。とりあえず埋めようと思って……。
年に2回くらい気まぐれに市販のルーでカレーを作るだけなのに「料理」とも書いてます。かみさんに「大嘘つき!」と言われます。申し訳ない。
頂いたチケットで、しかもかなりの頻度で寝ちゃうのに「芝居鑑賞」とも。ごめんなさい。今後は「芝居鑑賞中のうたた寝」と書き直します。
酒は好きなので「飲酒」と書いたら、仕事先で一升瓶を山ほどもらうようになりました。帰り道がメチャクチャ重たいので「ほどをわきまえた飲酒」と書き換えたら、一升瓶が四合瓶に変わりました。それでも一度に3本もらったら重い。ビニール袋の持ち手で指がちぎれそう。