血税635億円もかけた衆院選は自民党が283議席(追加公認含む)と大勝、公明党とあわせて全議席の3分の2を上回る勢力となり、憲法改正の発議が可能となった与党。自民党の重鎮、山崎拓副総裁が安倍政権に今回の解散には「大義がない」と苦言を呈した。
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今回の選挙では、安倍晋三政権への批判票の受け皿になろうとした小池百合子氏の希望の党の失速が命運を分けました。小池氏が院選に立候補しなかったことで政権選択の選挙にならなかったことが、最大の敗因でしょうね。
4月に私が小池氏と小泉純一郎氏、二階俊博氏らと食事を共にした時には、安倍晋三首相が同じ店に居合わせ、挨拶を交わしました。あの時は、こんな展開になるとは思いませんでした。私自身、この時期に解散するとは思わなかったし、小池氏もそうではないか。結果だけ見れば、安倍首相の解散時期の判断は正しかったということになります。
ただ、今回の解散には大義がなかった。曲解かもしれませんが、安倍首相は憲法改正をしないですむ事態をつくるため、自公で維持していた衆院の3分の2の議席をあえて自ら捨てにいったのではないかとさえ思えます。3分の2を維持していたら憲法改正の発議をせざるを得なくなりますが、その後、国民投票で2分の1の賛成が得られなければ、政権は即、退陣に追い込まれる。そのリスクを回避しようと長期政権を維持することにこだわったのではないか。(結果的に3分の2は維持したが…)。
北朝鮮問題については、安倍政権の姿勢に矛盾を感じます。安倍首相は拉致問題の解決に強い意欲を見せる一方で、武力行使をちらつかせる米国のトランプ政権を支持していますが、本当に武力行使となったら拉致被害者にも危険が及びます。トランプ米大統領に追随して、そんな事態を起こしていいのか。
安倍政権は北朝鮮がミサイルで日本だけを狙っているかのように危機を煽っていますが、そんな単純な話ではない。武力行使となれば「第2次朝鮮戦争」が勃発してソウルが火の海になり、最前線の在韓米軍にも大きな被害が出る。在日米軍基地も攻撃対象になる。
こうした事態を避けるためには、6者協議の枠組みを使うしかない。中国、ロシアを巻き込んで、米朝の対話を促していく。安倍首相はここまでまったく存在感を示せていませんが、地道に対話を促していくほかに道はないと思います。(構成/本誌・小泉耕平)
※週刊朝日 2017年11月3日号より加筆