ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。ラスベガス銃撃事件を機にプラットフォーム事業者のあり方も変わると予測する。
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米バージニア州シャーロッツビルで、白人至上主義者とそれに抗議する人たちの衝突事件が8月に起きた。グーグルやフェイスブック、ツイッターなど多くのプラットフォーム事業者は、差別的な投稿を行うユーザーのアカウントを停止。扇動的なコンテンツに収益を分配しないよう方針転換した。
これに追い打ちをかけたのが、10月1日にラスベガスで起きた銃乱射事件だ。58人の死者と489人の負傷者という、単独犯としては米国史上最悪の被害をもたらした。この悲劇は全米で銃規制の議論を巻き起こし、その余波を受ける形でユーチューブは、サービス上で公開されていた銃改造の解説動画を削除することとなった。
米国の銃乱射事件は1980年代以降、拡大の一途をたどっている。銃乱射事件で亡くなった人数は80年代の10年間では79人だったが、2000年代には倍以上の171人に増加。2010年代は、まだ7年しか経っていないが、既に350人に及んでいる。1994年に連射が可能な「攻撃用銃器」(アサルト・ウェポン)の製造・販売を禁止する法律ができたが、04年に失効している。
被害が大きくなる背景には、ネットを利用して誰でも簡単に殺傷力の高い銃を手に入れられることもある。ラスベガスの事件を起こしたスティーブン・パドック容疑者は、コンサート会場から約300メートル離れたホテルの32階の窓から、会場めがけて銃を乱射した。犯行に使われた部屋からは、銃床を可動式にすることで自動小銃と同じように連射ができる「バンプ・ストック」(Bump Fire Stock)の改造をしたライフルが、10丁以上発見された。