明るい選挙推進協会のサイトで紹介されていた短編映画「希望の党☆」。今は見られなくなっている
明るい選挙推進協会のサイトで紹介されていた短編映画「希望の党☆」。今は見られなくなっている
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監督の金子修介さん (c)朝日新聞社
監督の金子修介さん (c)朝日新聞社
脚本を担当した松枝佳紀(まつがえ・よしのり)さん(撮影/多田敏男)
脚本を担当した松枝佳紀(まつがえ・よしのり)さん(撮影/多田敏男)

 総選挙も後半戦。各政党は支持の訴えとともに、投票に行くよう呼びかけている。その陰で、12年前に税金で作られたある短編映画がインターネット上から削除された。投票に行くことの重要性を訴える内容で、本来ならこの時期にこそ見てもらいたいものだが、何がまずかったのか。取材すると見えてきたのは、公益財団法人「明るい選挙推進協会」の“忖度”とも言える対応だった。

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 短編映画は「希望の党☆」(約20分)というタイトルで、総務省の委託を受けて公益財団法人「明るい選挙推進協会」が、投票率向上に向けた啓発用に製作した。3千万円を超える税金が投入されたとみられる。小池百合子・東京都知事が党首の「希望の党」が結成される前の作品で、直接の関係はない。

 ストーリーは、投票権を放棄する人が多いと、ディストピア(暗黒社会)が到来しかねないことを表現している。妻と高校生の娘の3人で暮らす中年男性が主人公。男性は選挙を軽視していたが、架空の政党「希望の党」が政権を取ると、投票権を行使しなかったことを理由に選挙権を奪われる。その後社会は行き過ぎた犯罪取り締まりなど、おかしい方向に進む。最後には娘が兵士として戦争に向かうことになり、「戦争なんて行っちゃだめなんだよ」と訴えるが、なすすべはない。後悔した中年男性は全てをやり直したいと願うが……。

 監督は平成「ガメラ」シリーズなどで知られる金子修介さん(62)。ツイッターで作品についてこう語っている。

「12年前、『選挙に行かないと民主主義が崩壊してファシズムが来ちゃうよ』と訴えたかった。ファシズムは最初耳ざわり良いネーミングで、例えば『希望』とか使って現れるかもというブラックジョーク」

 脚本を担当した松枝佳紀(まつがえ・よしのり)さん(48)も、選挙の大切さを伝えたかったという。

「みんなの希望と期待を背負って出てきた政党が、必ずしも幸せな未来を作るものではないという、逆説的なことを書きたかった。みんなに投票してもらえそうな名前として『希望の党』を思いつき、金子監督が選んでくれた。イメージカラーの緑色は、期待を集めそうだというので金子監督が考えた。あくまで架空で、どこか特定の党を批判するつもりは全くなかった。みんながこれを見て、ちゃんと政党を見極めて、選挙に行ってもらいたい」

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