シャープな顎に、シックスパックに割れた腹筋──。斬新なウルトラマンの“新作”映画「鋼鐵飛龍之再見奥特曼」(注:奥特曼はウルトラマン)が10月1日、中国で公開された。中国の既存アニメのロボットたちとウルトラマンが共演する“コラボ”もの。映画が日中友好の懸け橋になっているという喜ばしいニュースかと思いきや、国境を超えたバトルが勃発していた。
ウルトラマンシリーズを制作した円谷プロダクションは「当社は一切関知しておらず、許諾・監修等なく製作されているもの」として抗議。一方、中国の映画制作会社は「タイの会社から海外利用権利を譲渡された日本の別の会社と契約した」と主張しているのだ。
食い違う両者の主張。それをひもとくには、20年前にさかのぼる。
当時の報道などによると、円谷プロは1997年に、今回中国の会社が海外利用権利を得たと主張するタイの会社を相手に、著作権訴訟を東京とタイの裁判所に起こした。タイの会社は「海外利用権を譲渡してもらう契約を結んだ」と主張し、円谷プロは「契約書は偽物」と訴えた。
裁判の末、日本では2004年に円谷側の敗訴が確定。ところが、タイ最高裁では08年に勝訴した。海外の権利関係をめぐって、どちらも自国では主張が認められないという、いびつな状態に陥った。その後、タイの会社から日本の企画デザイン会社が権利を譲り受けたという。今回の中国の会社の主張が、日本国内の判決に基づくのなら、「海外利用権を得ている」とするのは根拠があるのかもしれない。