

放送作家でコラムニストの山田美保子氏が楽屋の流行(はや)りモノを紹介する。今回は、メイク室で愛用されてきた「ファンデーション」について。
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ハイビジョンという言葉が一般的になった20年前頃、テレビ局のメイク室の“二大クリームファンデーション”と言えば、「アルブル」と「江原道」だった。
一般の方には購入することができない「アルブル」は、その昔、「ソフィア」という社名だったため、いまも「ソフィア」と呼ぶメイクさんや出演者がいるほど愛されるメイク室の逸品だ。
とにかく、そのカバー力に定評がある「アルブル」には、どんどんカラーバリエーションが増えていて、出演者の肌色に合わせて3~4色をあらかじめ小皿に混ぜておいてくれるメイクさんもいて、有り難い。
一方、「まだ『アルブル』は早い」とメイクさんが判断した若い出演者に使われてきたのが「江原道」だ。だからか、アラサーの女子アナたちの間では、「メイクさんが、いつ『アルブル』を出してくるかヒヤヒヤしてしまう」という“あるあるネタ”も(苦笑)。美容院に行ったとき、美容師さんが鏡の前にどんな雑誌を置いてくれたかで自分の見た目年齢に直面する感覚に似ているかもしれない。
「江原道」のクリームファンデーションは、肌に密着させたときの感触が圧倒的に軽いので、早朝番組に出演する若い女子アナが2時台とか3時台にメイクをするときにも最適。男性にはおわかりいただけないかもしれないが、ファンデーションの重さ、軽さで、一日の気分が左右される場合が女性にはあるからだ。
メイクさんが言うには、「着け心地が軽い分、気になる部分に重ね塗りしやすい」、つまりコンシーラーのようにピンポイントで肌にのせることもできるのだ。
昔から麻布十番に店舗があったので、仕事帰りに立ち寄るタレントも多かったし、著名なメイクアップアーティストが“まとめ買い”する姿も見られた。
かつて中森明菜が使っていることでも有名だった赤いチューブの「江原道マイファンスィー モイスチャー ファンデーション」をアラフォーになっても「私は、これ」と頑なに(!)使い続けている女子アナも多い。
そして最近、メイク室でよく見かけるのは、ガラスボトル入りの「アクアファンデーション」。特に謳っていないもののハイビジョン対応で、潤い成分とエイジングケア成分のW効果でエステティックサロンに行った直後のようなハリとツヤが得られるとのふれこみだ。
いま街中でよく見かける同社のポスターのコピーは「私の肌は、日本製。」。HPには「いまも、あの頃も。」とある。長年の愛用者は特に頷(うなず)いていることだろう。
※週刊朝日 2017年10月13日号