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 ジャズの話に世相を持ち込みたくないですけどという前提で。

 やはり情報操作/隠匿のような活字がネットに踊っています。隠匿しようが操作しようが既に我々は正しい情報を知る術を知っているのでもはやそれは子どもだましに近い、どうにも醜く映って仕方ありません。しかし、タクシーに乗って運転手さんなど(ネットを活用していない一般の方達)と話すと危機管理の温度差にびっくりします。

 つまりTVやラジオのニュース(もしかしたらニュースでさえ見ていないかもしれない)の情報のみに培養されているとこうした塩梅に染まってゆく。操作が一定の成果を上げているということでしょうか。もしかしたら有史で一番立ち上がらなきゃいけない今の現状を踏まえたデモでさえ、実は一番の「敵」は政府でも東電でもなく冷ややかな目で見ている人たちの無関心じゃないかとさえ思えるわけです。こうしている間にも静かに被爆している子ども達がいるのです。福島ではもう一刻の余裕もない待った無しの状況が続いています。

 有志の方達は市内の遊具施設や道路脇道などで放射能量等を計測し測定量を掲げたボードを立てて注意を促しています。しかし一方で雨の中、部活動に励む子ども達がいるというカオスな状況の中、ボランティアを続けながら中央と連携し地元に留まりレコード屋を続けている男がいる。

 僕らDJや欧州、特に7インチを収集しているマニアを多数顧客に持つ「Little Bird」という店の店主がそれ。彼一人で世界中のディーラーと渡り合って日本はおろか海外のコレクターにまで信頼が厚く、東京からも足げに通うマニアも少なくない、もしかしたら最強の店の一軒ではないかとも思っています。

 その彼から「久しぶりに珍らしい7インチが入荷しました」との連絡。以前そういった連絡は常だったのですが震災以降久しぶりのことで、ツイッターなどでは情報を共有していましたがようやく落ち着いたんだなと安堵。普通レコード屋といえば試聴、ネットのバーチャル店の場合にはMP3試聴ファイルで確認するのですがLittle Birdの場合は『電話試聴』電話って!しかし試聴する音そのものよりもそのレコードに関する情報(誰それのコンピに収録されていた/誰それが最重要ウォントに挙げていた/LP収録から漏れプロモコピー100枚のみ存在する云々)などが意外に血を滾らせたりして即決してしまう。

 今回聴かせてくれたのは3枚。うち一枚を紹介します。DJ系のコレクターで知られた”JAZZMAN"GERALDというその名も「JAZZMAN」という復刻レーベルを主宰するディーラーが居ますが彼をしてその内容に驚愕をしたという7インチ。仏「PARIS SECRET」なるスパイ映画のサントラ。4/6拍子でスリリングなチネジャズがてんこ盛り。テンテット以上の大編成での演奏になりますが、この時期のバークリー(レーベル)特有の”分離の良い”クリアなミックスで今でも新鮮に聴こえる。アラン・ゴラゲールはアンリ・サルバドールやボリス・ヴィヴァンらと文化的双方向性を持つピアニスト兼アレンジャー。ゲインズブールの作品にもクレジットを見る事ができますがフランス・ギャルのアレンジなどにも顔を出すポップス寄りの作品と、ジャズ寄りの作品と多彩な評価を併せ持つ。