弾道ミサイル発射を見届ける金正恩氏(c)朝日新聞社
弾道ミサイル発射を見届ける金正恩氏(c)朝日新聞社
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 北朝鮮は9月3日、6回目となる核実験を強行した。昨年9月以来で過去最大規模となった。朝鮮中央テレビは同日午後3時半の「重大放送」で、大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験に「完全成功」したと発表。トランプ米大統領は、核実験を強行した北朝鮮をツイッターで批判し、軍事力行使も辞さない構えをほのめかした。9月9日の建国記念日を目前に朝鮮半島情勢は一段と緊迫してきた。

 しかし、安倍政権は「圧力を強める」と強弁するばかりで、北朝鮮の相次ぐ暴走に対し、準備不足が露呈した格好だ。

 8月29日午前5時58分ごろ、平壌近郊の順安空港から発射された弾道ミサイルは約14分間飛行し、北海道を通過し、午前6時12分ごろ襟裳岬の東約1180キロの太平洋上に 落下した。

 発射から4分後、全国瞬時警報システム(Jアラート)が北海道や東北、北関東までの広範囲で作動した。しかし、Jアラートの伝達から海上に落下するまで、わずか約10分。JR東日本とJR北海道の新幹線や在来線が一時、運転を見合わせ、休校を余儀なくされる学校もあった。

「Jアラートが鳴っても避難する場所もない」(青森市の会社員)と街頭などで戸惑いの声が続出。ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏がツイッターに「こんなんで起こすなクソ」と投稿、炎上する始末に。有事の際の備えが心もとない実態をさらけ出した。

「政府からお知らせします」というアナウンスから始まる弾道ミサイル落下についての政府広報のテレビCMが流されたのは6月下旬だ。Jアラートや屋外スピーカーなどから緊急情報が伝えられたら、屋外では「頑丈な建物や地下に避難を」、近くに建物がなければ「物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る」などと呼びかけている。

 民放43局で2週間にわたって放映された。同様に新聞にも全国70紙に「弾道ミサイル落下時の行動について」と題する政府広告を掲載した。内閣府によれば、テレビCMと新聞広告で1億4千万円ずつ、このほかウェブ広告にも8千万円で、税込みで合計3億6千万円を費やしたという。2007年から運用を開始したJアラートに至っては、全国の自治体に整備事業費として92億円がつぎ込まれているのだ。

 しかし、自民党幹部が呆れた口調で語る。

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