セカンド・ナイト・アット・インディゴ・ブルース
セカンド・ナイト・アット・インディゴ・ブルース
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78分一本勝負、さあどこからでもかかってこい!
Second Night At Indigo Blues (Cool Jazz)

 マイルスがニューヨーク「インディゴ・ブルース」に出演したのは、1988年12月17日と18日の2日間・4ステージのみ。17日のライヴは『インディゴ・ブルース』(Mega Disc)に7曲、『ライヴ・アラウンド・ザ・ワールド』(Warner Bros.)に《イン・ア・サイレント・ウェイ~イントルーダー》(上記メガ盤と同一テイク)、『ラジオ・プロジェクト・パート1~8』(So What)に《ザ・セナテ~ミー&ユー》《ドント・ストップ・ミー・ナウ》の2曲が収録されているが、初登場となる2日目(18日)のライヴを収録したのが、この『セカンド・ナイト・アット・インディゴ・ブルース』。しかも既発盤がファーストとセカンドの両コンサートが混在しているのに対し、すべてファーストですっきりと消化吸収も良く、かさねて録音状態も理想的なオーディエンス録音とあっては、これはもう絶対にゲットの78分一本勝負、さあどこからでもかかってこい!

 ゴワーン。《イン・ア・サイレント・ウェイ》の厳かなテーマが眼前で鳴る。クラブゆえの距離感は、おお、マイルスが目の前で吹いている。リッキー・ウェルマンのバスドラも近くで鳴って快感アップ。となりのテーブルの「あんた、彼らが見える?」とかなんとかいっている白人ビッチェズ・ブリューの黄色い声も今夜は気にならない。「マイルスを狭いジャズ・クラブで聴きたかったなあ」と永遠に叶わぬ夢を抱きながら息絶えていくこと必至の人は、まずはこのライヴを聴いて長生きしてほしい。往年の「バードランド」や既発インディゴ・ライヴ盤や「ブルース・アレイ」などよりはるかに「マイルスをクラブで聴いてる感」が漂い、1988年冬のニューヨークのクラブにタイム・トリップした感じ。客席のヒソヒソ声やグラスが触れ合う音はビル・エヴァンス『ワルツ・フォー・デビー』のマイルス版といえばわかりやすいだろう。ブルース《スター・ピープル》の2分20秒前後でミュートからオープンに変わるあたりは、うーん、ジャズだなあ、クラブだなあ。

 オープンといえば《ハンニバル》、2分19秒からの魂のマイルスを聴け! とてもマーカス・ミラーが「ちょうどハンニバル・マーヴィン・ピーターソンのアルバムを聴いていたから《ハンニバル》という曲名にした」という安直さが信じられないくらいのマイルスの熱演、いつかマーカスとハンニバルに聴かせたい。そして《ヒューマン・ネイチャー》、至近距離ということが幸いしたのだろう、2キーボードの役割もくっきり。ともあれ、2007年登場の輝ける新たな名盤誕生と激しく断言してもいいだろう。

【収録曲一覧】
1 In A Silent Way-Intruder
2 Star People
3 Perfect Way
4 The Senate / Me And You
5 Hannibal
6 Human Nature
7 Wrinkle
8 Tutu
(1 cd)

Miles Davis (tp, key) Kenny Garrett (as, fl) Joey DeFrancesco (synth) Adam Holzman (synth) Foley (lead-b) Benny Rietveld (elb) Ricky Wellman (ds) Marilyn Mazur (per)

1988/12/18 (NY)

From 1st concert

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