漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、「屋根裏の恋人」(東海テレビ制作・フジテレビ系 土曜23:40~)のキャラクターに違和感を覚える。

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 ベタベタでドロドロだけどクセになる。そんな東海テレビの昼ドラ枠が、夜に移動した「オトナの土ドラ」。これまではサスペンス系の作品が多かったが、今回の「屋根裏の恋人」は、まさに深夜のメロドラマだ。

 物語は、しょっぱなから素っ頓狂。専業主婦の衣香(きぬか=石田ひかり)は、夫(勝村政信)の父親が亡くなったのを機に、その実家の洋館で暮らすことになる。ちなみに演出は、映画「リング」の中田秀夫監督なので、いちいちホラー風味。

 1話冒頭ホームパーティーの場面、ドンドコドンドコ、ベリーダンスを踊り狂う夫の継母・千鶴子役・高畑淳子62歳。それだけで凍るわ、背筋。ダンスの腹出し衣装のまま、ぐちゅっと苺を噛む淳子。赤い液体がしたたる唇。血走った瞳。もうすぐ淳子が、貞子みたいにテレビ画面から出て来ても不思議じゃない。

 そんなパーティーのさなか、突然現れた衣香のかつての恋人・樹(いつき=今井翼)。彼女を羽交い締めにして口を塞ぎ、ささやく。「久しぶり」。やってることは犯罪気味なのに、挨拶のん気すぎ。借金取りに追われ、命も危ないと言う樹。「匿(かくま)ってくれ」と、勝手に屋根裏に住んじゃうから、さあ大変。

 浮気をしている夫、無関心な子供たち。心が満たされぬまま、衣香が一人さびしく誕生日兼結婚記念日をすごしていると、聞こえてくるバイオリンの音色。樹が屋根裏でバイオリンを弾いていた。お前は屋根の裏のバイオリン弾きか。

「誰かに気づかれたらどうするの?」と、慌てる衣香に樹は答える。「誰も気づきはしない。世の中に忘れ去られた者が集う……。それが屋根裏だから」みつを。と、思わず「みつを」を付け足したくなるポエマー樹。

「俺が守る、壊れそうになってるあなたの心を」と、衣香を抱きしめキス。って、あんた家賃も払わず、勝手に住みついてるだけだから。「屋根裏の恋人」というより、ただの「屋根裏の変人」だから。

 しかし、勝手に冷蔵庫のハンバーガー食うわ、パン一斤まるごと食いするわ、「屋根裏の住人にも、時にはお茶が必要だ(みつを)」などと、勝手にお茶いれてキッチンで飲んでるわ、やりたい放題の樹。あまりにこの家になじんだその姿。すっかり元彼ヅラしてるけど、もしかして屋根裏に元からずっと住んでる座敷わらしなんじゃない?

週刊朝日  2017年6月30日号