今年2月、南相馬市にある、除染を手掛けた環境省の福島環境再生事務所に出掛け、担当者に直接、真相を聞いた。
「まったく除染していないと認め謝罪があった。そこで私は近所でまったく除染していない家が2軒ある“除染とばし”は組織的だと詰め寄った。担当者は、否定しつつも調べると約束しました」(Aさん)
南相馬市小高区の江井績(えぬいいさお)さん(75)は南相馬市と合併するまで、小高町長を2期6年務めた。原発事故後は「小高区民を守る会」の代表を務めている。「除染とばし」の実例は江井さんの耳にも入っているという。
江井さんの知人Bさん(75)の小高区内の家を訪ねてみた。自宅に隣接した畑地の真ん中を市が管理する農道が通っている。農道の途中までは真新しい砂利が敷き詰められ、表土をはいで除染が行われたのがわかる。ところが、なぜか途中で砂利面は途切れ、雑草で路面が覆われている。
「聞いたところ、そこで除染を中断したまま、業者が来なくなった。環境省の地元事務所に問い合わせると『忘れていた』と除染していないことを認めた。はいだ表土は放射性廃棄物なのに、その場に置き去りになっているずさんさです」(江井さん)
環境省の福島環境再生事務所はこう答えた。
「Bさん宅は一部は除染していた。老朽化した家屋があり、倒壊のおそれがあったからできなかった」
Bさんに「除染をしていない」と説明した内容と食い違う。
除染作業を請け負ったJVの一つ、大成建設は本誌の取材にこう回答した。
「一部の除染はせずに完了としていたのは事実。指摘を受け再度除染をしました。担当者の誤認でご迷惑をかけた」
前出のAさんは訴える。
「除染とばしが横行しているとなれば、安心して帰れない。あえて公表しました」(今西憲之、烏賀陽弘道)
※ 週刊朝日 2017年6月16日号