加戸氏は、政府の「教育再生実行会議」の有識者メンバーでもある。前文部科学次官の前川氏はTBSの番組で、加戸氏が有識者に選ばれたのは「総理から直々にご指名があった」と証言している。教育再生実行会議でも獣医学部新設を売り込み、「何とか四国の空白地帯に獣医師養成大学を誘致したい」(13年10月)とゴリ押ししていた。

 安倍首相、菅市長、加戸氏には別の共通点もある。右派団体「日本会議」の活動に参加していて、加戸氏は「美しい日本の憲法をつくる愛媛県民の会」の実行委員長。安倍政権下での憲法改正も訴えている。

 また、加計学園系列の岡山理科大附属中学では、歴史と公民で育鵬社の教科書を使用している。同社の教科書製作には「新しい歴史教科書をつくる会」の元メンバーが関わり、右派系団体が全国で採択を後押ししている。岡山県内の中学校教師は「最近の報道で加計孝太郎理事長が安倍首相と古くからの友人だったと知り、納得できた」と話す。

 獣医学部新設に反対する今治市民は、一部の“お友達”だけで進められる計画に危機感を抱いている。

「獣医学部の定員は160人で、他大学の平均の約3倍。就職先が確保できなければ受験生が減り、大学経営が難しくなる」

 報道によると、学部設置の可否を審査している文科省の大学設置・学校法人審議会は、教員に若手と65歳以上の教授が多いことなどを問題点として指摘しているという。官邸が18年4月の開設を文科省にせっついたというが、雲行きが怪しくなっている。

「今治市の負債はすでに900億円以上。このままでは『第二の夕張』になりかねず、市民は置き去りにされている」(前出の今治市民)(本誌・西岡千史)

週刊朝日 2017年6月16日号