柄本:言っているセリフは「てにをは」とか違うわけ。だけど、もうふくらんじゃってるの、2人で勝手に。それを見たときに、これがウワサに聞くプロの役者なんだなと思いましたね。自分はやっぱりアマチュアでいなくちゃいけないと思いました。

林:柄本さん、アドリブでいじられたときに困ったお顔をなさって、それがすごく印象に残ってます。

柄本:いやもう毎日困ってましたね。

林:それが勘三郎さんの狙いだというのはわかりましたけど。

柄本:勘三郎さんがとてもよくしてくれて。僕がどんなにできなくても、怒られたことは一度もないし、楽屋も一緒にしてくれたんですよ。

林:明らかに色彩が違う出演者が化学反応を起こしていました。あのお芝居、大当たりで切符がなかなか取れませんでしたよ。あのころ新橋演舞場はすごかったですよね。立て続けに新作をやって。

柄本:そうですね。勘三郎さんは俳優さんでもあるけど、大変立派なプロデューサーですね。

林:柄本さんもそうですよね。

柄本:俳優はみんな、プロデュース能力も備えているんでしょうね。僕は小さな場所で、自分の芝居を自分で全部考えてやります。結局この仕事って、売り手と買い手の問題で、潜在的な失業者なわけでしょう。映画とかテレビは、向こうから買いに来ない限り出られない。だけど、僕は劇団(劇団東京乾電池)を組んでいますから、自分たちがバイトしたカネで劇場を借りて、芝居は自分のリスクの中でできる。あっちとこっちは全然違うんですが、この年まで続けられてます。ありがたいことです。

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